L2読解における阻害要因に関する考察.PDFVIP

L2読解における阻害要因に関する考察 23 L2読解における阻害要因に関する考察＊ 飯島博之 Hiroyuki　lHlMA 1．はじめに 立しない事例は次の3つのケースに分類できることになる。 つまり、（a）解読に欠陥がある場合、（b）理解に欠陥があ 　現在、読解の過程が相互作用であることは広く受け入れ る場合、（C）解読と理解の両方の過程に欠陥がある場合、 られている。ここで言う相互作用とは、単にテクストの文 である。この式はL1読解にもL2読解にも当てはまるもの 字を理解し文を理解してゆくというボトムアップ処理と、 であるが、L2読解においては特に下位レベルの解読能カに 読み手の背景的知識を活用したトップダウン処理との相互 関わるスキルに問題が多いことが容易に予想され得る。ま 作用というだけではなく、読解を構成する様々なスキルの た、この式に従えぱ、読解力上位者は解読も理解も両方と 相互作用を意味している。読解の過程では、語彙の認知と も優れていることが必要となる。この式に基づくと、読解 いった低次の過程からテクストの内容理解に関わる高次の 阻害要因を研究するためには、dとcの構成要素を具体的 過程まで、すべてのレベルで読解の構成要素が同時に相互 に検討してゆくことが最低限必要である。 作用するという考え方が現在の主流となっている　（Grabe，　C㎜ell（1988）はテクストに基づいた処理（ボトムアップ 1988）。 処理）と知識に基づいた処理（トップダウン処理）の相互 作用としての読解が阻害され、両者のうちの一方に過度に 　第1言語（L1）、第2言語（L2）を間わず、読解の過程は 相互作用であるが、この相互作用モデルに基づいて読解阻 依存しなけれぱならない状態が読解困難を生じる原因であ 害要因を考えると、読解という複合能力に関わるすべての るとして、L2学習者の読解に問題が生じる原因を（a）背景 スキルが阻害要因と、なり得る。更に、テクストの内容に関 的知識の欠如、（b）スキーマ活性化の失敗、（c）スキノレの する好みや英語学習への動機付けといった学習者の情意に 不足（言語スキルと読解スキル）、（d）L2読解についての 関わる要因も阻害要因として考慮する必要が生じる。 誤った考え方、（e）認知スタイルの間題、の5つに分類し ている。 2．先行研究 （compreh㎝si㎝舳ure）の原因をすべて挙げることはできな 2．1．理論研究 いとしながらも、読解失敗の原因となりうる可能性が他よ 　読解とは複合能力であり、読解阻害要因を考える際には りも高い原因として（a）ワーキングメモリの制約、（b）語 読解の構成要素を理論的に考えることが必要である。 彙ブロセス、（c）類推、（d）理解モニタリング、（e）単語 Gough，Hoover，㎝d　Peters㎝（1996）は読解は複雑な過程で の意味、（D領域知識、の6っを挙げている。これらの各 あり、多くの下位プロセスから成立していると指摘した上 部門に分類され得る具体的事例をL2学習者の場合を念頭 に検討することは読解阻害要因の実像を考える助けとなる。 で、読解　（reading）を解読　（d㏄odi㎎）と理解