統計的思考の育成のための「不確実性」概念に関する考察2-確実不確実の判断基準の整理分析.PDFVIP

第 45 回数学教育論文発表会論文集P.737 -742 統計的思考の育成のための 「不確実性」概念に関する考察２ －確実/不確実の判断基準の整理・分析－ 垣花 京子＊ ＊ ＊ ，佐野 司 ，松岡 東香 ＊筑波学院大学 要 約 日々，高度情報化が進んでいる知識基盤社会に対応する人材育成の一環と して，新学習指導要領では，中学校に 「資料の活用」、高校に 「データ分析」 が設定され，全生徒が履修することとなった．筆者らは，統計教育が今まで の知識教育に終わらないよう，まず，不確実性概念の定義を明確にし（垣花， 佐野，2011）、不確実性概念の認識形成の発達的構造を明らかにし、統計的 活動を通して，「知の創造」につながる教材を開発することを目指している． 本研究の目的は，プロトタイプとして，不確実性概念の判断の基準を作成す ることである．経済的事象，日常的事象，数学・物理に関する事象の例をあ げ，確実/ 不確実を判断し，その根拠を示すアンケート調査を実施し，確実/ 不確実を判断する根拠を整理・分析し，判断の基準の構築を試みた． キーワード：不確実性，数学教育，統計的思考力の育成， １．研究の背景 「21 世紀の知識創造社会に向けた統計教育 10 年前までの数学教育の中では確実性事 推進への要望」（山本拓他，2007）が出され， 象を対象とし，不確実性事象はほとんど扱わ その中に「算数・数学教科における統計教育 れてこなかった．2003 年のPISA の数学リテ 内容の見直しと時代に適した位置付けとして， ラシー調査の中で，統計・確率を扱う分野と 不確実性やデータのばらつきの概念は，子供 して「不確実性（Uncertainty）」という分 だけではなく大人にとっても理論だけでは学 野が，「量」．「空間と形」，「変化と関係」 びにくいものである.そのため，早期からの身 と並んで第4 分野として位置付けられた．ま 近な事例を踏まえた認知的かつ経験的訓練を た，2007 年に日本統計学会会長をはじめ，数 踏まえた教育がとくに重要になる.」述べられ 学教育学会会長も含め各学会の会長らにより， ている．そして，社会の変化に対応するため 737 統計的思考力の育成が重要視され，中学校では Uncertainty）」を出版して，不確実性が議論さ 「資料の活用」，高等学校では「データ分析」が れるようになった．本著の後書きで監訳者の都 必修項目として履修することになった．この新し 留重人が不確実性に対応する英語は， い学習指導要領では 「習得，活用，探究」をキー Uncertainty （ある数値的概念が不確定）と ワードとし，「活用」が強調されていることがう Indeterminacy （物事が不確実な場合）の２ かがえる． 「資料の活用」でも，数値データを活 つあると述べ，本著ではUncertainty が使わ 用する新しい形で授業の提案もされている（西仲 れている．教育でもUncertainty の意味で不 則博他，2010 など）．しかし，｢資料の活用｣や 確実性が使われ，「数値的概念が不確定」を 「データ分析」で，「不確実性概念」