第二次大戦が終わった後.docVIP

信頼性工学ノート １．信頼性とは 信頼性の起こり 　人類が信頼性を目覚めるきっかけは，１本の真空管であった．真空管が信頼性という概念を誕生させる動機の１つであったことは事実のようです． 　第二次世界大戦中，アメリカは大量の軍用機を極東に配置していた．使用目的が日本に対する攻撃であったのは遺憾であるが，幸か不幸かそれらの軍用機が半分以上使いものにならなかった．調べてみると，飛行機の航法や通信などに使われている電気機器が半分以上も故障しているし，予備品でさえ半分は故障しているという始末であった．そしてそのほとんどは真空管の故障であった． 　これはアメリカ軍にとってはもちろん，アメリカ政府にとってもゆゆしい問題であった．さらに，艦船用の電気機器も正常に作動するほうが少ないことも判明した．そして，軍と産業界が一体となって対策が検討されはじめた． 　まず，真空管が図面どうりに正しく作られるようにと製造過程に対する管理を厳しく，徹底的な検査が行われた． 　一方，苛烈な戦争のさなかに故障が続出するアメリカ軍からは，絶対に故障しない機器を作れ，と厳しい要求が出された．メーカとしても設計に何を盛り込めば故障しない製品に近づくことができるかと懸命の研究を開始した．この「なに」が信頼性という概念の起こりです． 　第二次大戦が終わった後，軍が中心になって戦争中の技術活動が生んだ膨大な資料の整理にかかりました．中でも将兵を悩ませた電子兵器の故障に関するデータは，改めて信頼性に関する問題意識を駆り立てずには起きませんでした．こうして1950年に電気機器の信頼性を調査する委員会が軍や民間の専門家を集めて発足し，全面的な調査研究が開始された． 　折しも朝鮮戦争（1950～1953年）が勃発し，ジェット戦闘機がはじめて本格的に使用されはじめたのですが，電子機器の故障に起因すると思われる事故が多発し，せっかくの戦闘機が数多く失われた．これが議会で取り上げられ政治問題化したため，信頼性についての調査研究がいっそう加速された．そして，前記の委員会は電子機器信頼性諮問委員会（通称ＡＧＲＥＥ）に昇格して，１９５７年には有名なＡＧＲＥＥレポートが提出された． ＊ＡＧＲＥＥは，Advisory Group on Reliability of Electronic Equipmentの頭文字を連ねたものです． 　このＡＧＲＥＥレポートは，日本でも初期の信頼性活動に参加した人たちにとってはバイブルのようなものでした．内容は，信頼性に対する定量的な要求の仕方と，信頼性を確認するための試験法であり，アメリカ軍が電子機器を調達する際の方針に画期的な転換をもたらすとともに，日本などに対しても大きな影響を与えた． 　そのころは，米ソのミサイルや宇宙開発の競争時代が目前に迫っていました．ミサイルや宇宙機器の生命は信頼性であり，費用の大部分は信頼性のために費やされるといっても過言ではない．信頼性の研究にいっそう拍車がかかった．こうして，１９６０年前後までに信頼性に関するＭＩＬ規格が続々と発行され，現在の整備された信頼性管理体系の基礎ができあがった． 　こうしてアメリカの軍事的な要求から出発した信頼性技術ではありますが，内容的には軍用機器にも民生用の製品にも差別なく有効であることに疑念はない．信頼性技術は軍用から民生用へと普及し，また，対象も電子機器から他の一般的な製品へと拡大され，さらに，最も信頼性技術を必要とする巨大システムへと応用されて行った． 信頼性技術と品質管理 　品質管理（quality control,略してＱＣ）　ことの起こりは互換性にあった．近代工業が発達し，製品を大量に作るためには部品どうしの互換性が必須である．つまり，部品の寸法が揃っていなければならない．そのためには製作誤差を一定の範囲以内になるように管理しなければなりません．ここに品質管理の芽生えがあったようです． 　ＴＱＣ（total QC） 信頼性を支える３つの柱 ?統計確率に基礎をおく信頼性工学 ?飛行機における双発と４発 ?直列系と並列（冗長）系 ?信頼性技術の周辺にある固有技術 ?ソフトウエアの信頼性技術　パリティビット ?むらのない金属材料の作り方 ?擦れ合う部分の摩耗の防ぎ方 ?荷重や応力の集中を避ける方法 など 信頼性工学の使命 信頼性工学の中にはそれ自体が製品の信頼性向上に直接に寄与する手法も含まれています．しかしながら，信頼性工学の使命は，製品の信頼性の現状を正確に把握し，改善の方向を示唆し，その結果を予測し，あるいは保証し，投資効率や危険負担についての判断資料を提供することにあると思われる． ?マネージメントの重要性 　人間が作り出す製品あるいは人間が運転する機械?装置は，すべて人間が絡んでいる．