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西田幾多郎の書簡に見る諸思想家(161) 研 究 ノー ト 西 田幾 多郎の書簡 に見 る諸思想家 一思想家についての記述 と注解 些 石 神 豆 は じめに 西 田幾多郎 の執筆 になる もの として,公 刊 を前提 に書かれた哲学的論文 ・ 随筆 ・巻頭言の類,そ の他本来公刊 を前提 としない 日記 ・書簡類,草 稿 その 他 がある。前者,と くに哲学論文 は,彼 の思想形成 の中心 をなす ものである が,後 者 は,公 刊 を前提 としていない ものだけに,公 刊 した ものでは見 えに くい西 田自身の率直な思いが吐露 されているとい える。 ただ し西 田の 日記 は, 日常的な さまざまな事柄 を記 した備忘録 的性格 が強 く,哲学 ・思想 的に立 ち 入 った事柄 が述べ られ ることはほ とん どない。 そ こで注 目され るのが書簡である。彼 の書簡 は,無 論,論 文 とは異 な り論 理的な叙述 とい うものではないが,口 語調 の短い表現で,折 に触 れて思い感 じられた事柄 が直裁 に語 られてい る。 しか も,家族や親族 は別 であるが,書 簡 の相手は,彼 の学問的経歴 に関わる者が多い。 したがって知人 ・友人 とは, 交流 の中で,し ば しば哲学者 ・思想家が話題 となることが多 く,当然 なが ら 書簡 はそ うした内容 を反映 している ものが多 く,あ るいは断定的に評価 を下 していることもある。 とくに親 しい知友 に対 しては,面 と向かって話 を して い る趣 があ り,西 田の息遣いが聞 こえて くるような気 さえす る。興味深いの は,年 代 とともに関心や評価 が変化 してい くことと,書簡 の相手 によって内 tls2) 容 ・表現が微妙 に異 なるとい うことである。 ここには,西 田自身の読書や思 索の進展がある し,また彼 をめ ぐる人間模様 の彩 りがある。そ こに西 田哲学 の発展史の内側 を見 ることもできよう。 書簡 に見 える諸思想家 について西 田の描 く像,あ るいは評価 は,あ ま りに も簡素な表現 ゆえに,第 三者 であるわれわれ にはその真意が必ず しも明瞭で ない もの も少 な くない。 また,書 簡 の記述だけをもって,諸 思想家 について の西 田の考 えを速断す るのは危険で もある。 しか し書簡 の性格上,断 片的に なるのは仕方 のない ところであろ う。書簡 は私信 であ り,西 田自身,公 刊 さ れ ることは思い及 ばなかった ことである。 ただ,わ ずかな記述で も,そ の背 景 となってい るコンテクス トの中においてみ ると,そ の意味す るものが浮か び上がって くることも多い。現在 の西 田哲学研究 に とって,書 簡集が大 きな 価値 をもつ ものであることは間違いない。 西 田の書簡集 か ら,思想家 についての記述 を抽 出,配 列 した。そ して若干 の注釈 を付 し,書簡 内容 の理解 に役立つ ように した。思想家 については,た だ名前 だけの ような場合 は とりあげなかったが,そ れ以外 は,思 想 を含 めた 人物像 が浮 かび上が る記述 を(若干,固有名詞以外の項 目あり)ほぼ書簡集全体 にわたって とりあげた。取捨 には難 しい面があ り,完全 を期すのは後 日とし たい。 凡 例 1.底本は岩波書店 『西 田幾多郎全集』第3次 全集版 を用 いる。第18巻,第19巻が 書簡集 である。表記 は基本 的に全集に したがったが,旧 字体 を新字体 に改めた り,読み方 を若干訂正 した箇所 もある。 2.思想家 をくあい うえお順〉に配列 し,書簡か らの引用文 を年代順 に挙 げる(複 数 になる場合,頭 に①②…を付 した)。引用文 の後,(1)書簡 の 日付,(2)宛 先,(3)全 集版の書簡番号 を記 した。 3.見出 し表記 は,現代一般 に通用 してい