平家物语における平教経の人物像.docxVIP

『平家物語』における平教経の人物像　―巻第十一「能登殿最期」をめぐって　日本文化　劉帥　ｙ１４０１４８梗概（建礼門院は源氏に渡され、平大納言時忠は生け捕られ、内侍所の入った御唐櫃も源氏によって収められた。敗勢を知り、多くの平家の武将は海に身を投げた。ただ大臣殿父子?宗盛と右衛門督清宗はためらって死の覚悟がなかったため、最後に敵に取られてしまった。大臣の乳母の子景経は主人を救うために討ち死にした。）剛勇な能登殿平教経は弓矢と太刀と長刀で数多くの敵軍を滅ぼした後、新中納言の命令によって判官義経を狙ったが、追いかけられなかったゆえ、「今はこれまでだ」と覚悟し、武具を捨てて髪を乱れにして大手を広げて敵に挑戦した。それに応じて押し寄せってきた安芸太郎実光の郎等を海に蹴て入らせ、左右の脇にそれぞれ安芸の太郎と次郎を挟んで、「さあ、我らは一緒に死出の山へ共にせよ」と言い、二十六の身で海に飛び込んで、悲壮な最期を演じた。（平家一族の最後を見た新中納言知盛は乳母の子と手を繋いで海にはいった。）はじめに周知のように『平家物語』は平家が滅びることを説き、軍記物語として世界にも有名で『源氏物語』と肩を並べる傑作である。この作品における平家第一の武将とも言われる能登守平教経の登場は遅いといえよう。都落ちの前の教経に関する内容は、名を記しただけで、特別の記述はない。水嶋合戦で教経はようやく搦手の大将軍として活躍し、奇策によって勝利を収めた。そのあとの「六箇度軍」の中で功よって人々に称賛して武勇の大将として描かれるようになる。「能登殿最期」に、教経の剛勇な姿で、一人で敵と戦い、判官源義経を追いかけ、最後敵二人を挟んで海に身を投げた。度々の合戦で、教経の勇武な戦ぶりで脳に強い印象をつけたる。　『平家物語』についての先行研究は諸本の研究、宗教思想の研究、和歌漢詩の研究、人物像の研究を含み、あまりにも多くて枚挙にいとまがない。しかし、平教経に関する研究は、少ないといえよう。その研究はほとんど人物像に限っている。しかも、その人物像について、武士の服装や『平家物語』諸本の差異を中心に見るものが多い。『能登殿最後』に描いた教経の最後の戦についての研究は滅多にないため、ここに取り立ててみようとするのは、人口に膾炙する「能登殿最期」の章段である。壇浦で平家の敗勢は既に決まったのを覚悟した多くの平家の武将は入水を選んだ。能登殿は衆人と違って敵軍と続けて戦うことにした。さて、作者は教経の最後の戦いでどのような人物像をえがいたのか。本発表は『能登殿最後』の原文を踏まえて、他の教経に関する章段も触れて、具体に作者に創造される平教経の人物像を考察する。　なお、本発表の引用するテクストは、古典文学大系『平家物語』（小学館　高野本を底本とする）によるものである。一巻十一「能登殿最期」の後半はほとんどの文字で教経を描いているといえよう。まず言うのは、義経の素晴らしい弓術である。「凡そ能登守教経の矢さきにまはる物こそなかりけれ。」とは、まさに百発百中のこと指すのである。周知のように、壇浦合戦の決戦地は海にあるため、教経はその時船に立って矢を射るに違いない。乱軍の中で、波に揺れて押し並ぶ船に立つだけの難しさは推測できよう。この状況で矢ごとに敵に当たる見事な技術を持つのは教経である。巻第十一「嗣信最後」に「能登守教経…王城一の強弓、精兵にておはせしかば、矢先にまはる者、射とほされずといふ事なし」との叙述がある。遠いところから鎧を着る兵士を矢で貫くとは、「王城第一」の射手で認めねばならない。教経は「矢だねのある程射つくし」したる後、「いかものづくりの大太刀ぬき、しら柄の大長刀の鞘をはづし」て白刃戦を始めた。同時に二つの刀を左右に持って薙ぎ回るのを見て、接戦する敵はない。ここに注意すべきのは、太刀は騎馬武者に適する武具で、長刀は騎馬武者に脅威する武具であるということ。両種の武具はサイズが違うため、一緒に使いにくいと推測する。教経はそれを同時に使い、「二刀流」の剣術に似ている武芸を持つといってよい。しかも、その効果がよく、「おもてをあはする者ぞなき」。剣術に秀でる者でないと、このように戦うことができるものか。新中納言の命令により、普通の兵士をよそにし、敵の大将判官義経に狙う教経は叫んで義経を探し、最後に義経の船に乗り当たった。判官は「かなはじとや思はれけん、長刀脇にかいはさみ、みかたの舟の二丈ばかりのいたりけるに、ゆらりととび乗り給ひぬ。」ここに疑問に感じている。前に「判官もさきに心えて、おもてにたつ様にはしけれども、とかくちがひて能登殿にはくまれず」との叙述がある。つまり、義経は教経が自分を狙っていることを知り、教経と組みたがっていた。一体どうして義経は教経が前に出るのを見て逃げってしまったのであ