潤滑剤に添加する極圧剤を目指した新規硫黄架橋モリブ.docVIP

化学?新素材?ナノテクノロジーステーション－６ 潤滑剤に添加する極圧剤を目指した新規硫黄架橋モリブデンクラスタ－錯体の開発 理学部　化学科　錯体化学研究室　柴原隆志，坂根弦太 Keywords: トライボロジー、錯体化学、二硫化モリブデン、ジアルキルジチオリン酸 ＜研究目的＞　天然鉱物でもある二硫化モリブデン molybdenum disulfide , MoS2 （ 輝水鉛鉱 molybdenite ）は層状構造をもち、はがれやすく軟かい。摩擦係数は極めて小さく、優れた固体潤滑剤で Fig. 1. 複核モリブデン錯体 ある。しかし鉱物油、水、その他種々の溶媒に対してほとんど溶解することはなく、潤滑剤としては予め摩擦面にコーティングしておくか、あるいは鉱物油等の潤滑剤に懸濁させて用いられている。しかし潤滑油に分散させることと摩擦面に吸着させることとは相反する界面現象であり、実際に油系潤滑剤においては、油溶性の硫黄架橋複核モリブデン錯体（例えば、ジアルキルジチオリン酸を配位子とする錯体（Fig. 1, R アルキル基））や硫黄架橋不完全キュバン型モリブデン三核錯体（例えば、ジアルキルジチオリン酸を配位子と Fig. 2. 三核モリブデン錯体 する錯体（Fig. 2, R アルキル基, L 溶媒））が極圧剤、もしくはフリクションモディファイア Friction Modifier として添加されており（これらの錯体は、トライボロジー分野では“有機モリブデン”と呼称されている）、これが摩擦面で発生した高温の熱で分解してMoS2が界面に生成、摩擦が緩和されている。当研究室ではFig. 2の三核モリブデン錯体の配位子を一部交換することにより、より高性能な極圧剤の開発を目指している。 ＜応用の可能性＞　Fig. 2の三核モリブデン錯体の配位子の一部は、一連の直鎖飽和脂肪酸CnH2nO2、側鎖をもつ飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、芳香族カルボン酸、ハロゲン脂肪酸、含硫黄脂肪酸、含酸素脂肪酸、含窒素脂肪酸、アミノ酸など、カルボキシ基をもつ多種多様な有機分子と交換できる。使用環境に応じた最適な極圧剤としての利用が期待できる。 連絡先： TEL / FAX 086-256-9443 柴原 ; 　　086-256-9428 坂根 E-mail shiba@chem.ous.ac.jp 柴原 ;　gsakane@chem.ous.ac.jp 坂根