細胞と組織とその障害-hoku-iryo.docVIP

看護病理学講義ノート２（細胞と組織とその障害）　　　　　　　小林正伸 病理学を理解するためには以下の２つを理解することが重要である。 １）人間の体が細胞から構成されていること、しかも多彩な細胞 　　集団によって臓器が構成されていることをまず理解する必要 　　がある。 ２）体を構成している細胞のほとんどには寿命がある。 ３）細胞の構成要素の傷害によって細胞傷害が起こり、最終的 　　に疾患（病的状態）につながる。 最初に誕生した生命体は、単細胞生物で、ある意味不老不死で、条件が許す限り分裂増殖を繰り返していられる。単細胞生物は30億年以上も前に誕生しているが、10億年ほど前にいつしか進化して多細胞生物が誕生した。単細胞生物はある意味で不老不死の生物だが、寿命をもった多細胞生物が誕生したのはなぜか？ 　 　 細胞の機能について 生物の特徴―階層性（スライド） 　　細胞の集団→組織→器官→個体 　　人間の体は無数の細胞から成り立っているが（多細胞生物）、１個１個が勝手に振舞うのではない。 　　細胞は集団を成すことによって組織をつくり、組織は集まって器官を作っている。器官は統合されてシステムを形成している。 器官系（organ system）は以下の種類に分けられる（スライド） 外皮系 (Integmentary system)骨格系 (Skeletal system)筋系 (Muscular system)消化器官系 (Digestive system)循環器官系 (Circulatory system)呼吸器官系 (Respiratory system)泌尿器官系 (Urinary system)神経系 (Nervous system)内分泌系 (Endocrine system)生殖器官系 (Reproductive system) 器官の詳細 例えば消化器官としては、食道、胃、小腸、大腸などがある。 器官は以下の4つの組織より構成される。（スライド） 上皮組織 結合組織 筋組織 神経組織 例えば胃は以下の組織から構成される １）columnar epithelium ２）nervous tissue ３）loose connective tissue ４）smooth muscle tissue ４．昨日のあなたと今日のあなたは同じか？ ５．組織における幹細胞の重要性 　　受精卵からつくられる胚性幹細胞（ES細胞）は全ての種類の細胞に分化する事ができる（全能性）。また、生体内の各組織にも成体幹細胞（組織幹細胞、体性幹細胞）と呼ばれる種々の幹細胞があり、通常は分化することができる細胞の種類が限定されている。例えば、骨髄中の造血幹細胞は血球のもととなり、神経幹細胞は神経細胞へと分化する。 　　例：造血幹細胞の分化 　　 マウスに放射線照射して骨髄を空っぽにする。 次いで造血幹細胞を１個移植すると、その後２年間赤血球も白血球もすべての血球細胞が１個の幹細胞によって作り続けられた。人間でいうと80年間１個に幹細胞で造血が維持されたことになる。 ６．細胞の概観（スライド） １）核‐---核膜、染色質、核小体 ２）細胞質‐‐‐細胞膜、ミトコンドリアその他細胞小器官 ７．核内の染色体と遺伝子（スライド） 　　　染色体：染色体（せんしょくたい）は遺伝情報を担う生体物質である。塩基性の色素でよく染色されることから、1888年にヴァルデヤー によって Chromosom と名付けられた。Chromo- はギリシャ語で「色のついた」、-some は「物体」を意味する。人では４６本（２２対の常染色体と性染色体１対）。 　　　遺伝子：遺伝子はDNAが複製されることによって次世代へと受け継がれる。複製はDNAの二重らせんが解かれて、それぞれの分子鎖に相補的な鎖が新生されることで行われる。蛋白の合成などは、遺伝子の発現調節部位に転写因子が結合して遺伝子がメッセンジャーRNA (mRNA)に複製されて細胞質に移動してリボソームにて蛋白に翻訳される。約３万個 ８．細胞内小器官（スライド） リボソーム（ribosome）はタンパク質合成装置である。 小胞体（endoplasmic reticulum、ER）は、細胞内に発達した膜系で?滑面小胞体と粗面小胞体があり、滑面小胞体はリン脂質、ステロイド、脂肪酸を合成する場となる。粗面小胞体は蛋白の合成を行う。 ９．細胞膜 　細胞は脂質２重膜によって外界と区切られている。外界からの物質の出入りは自由ではなく、特殊な運搬機構を使って行なわれる。 　 １０．全ての細胞の持つ共通項（スライド） １）設計図である遺伝情報を2本鎖DNAとして保有している。 ２）細胞の全ての活動