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　　大石氏関連の永林寺墓碑銘考 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清水太郎 　　　はじめに 　永林寺（東?八王子市下柚木）は金峯山道俊心月閣と号し、永源寺（東?所沢市久米）の末寺である。寺名は古く「永麟」と号したが、徳川家康が関東に入部のおり、御朱印に「永林寺」とされてよりの号である。江戸時代御朱印十石、境内三万三千坪、曹洞の古法憧地である。開山は一種長純（大石定重の弟、永源寺中興）、開基は大石道俊定久である。一種長純は定久の叔父に当たり、龍穏寺の俊徳によって剃髪得度し、法は大厳の正伝を嗣いだ。定久は深くこれに帰依し、一寺を建立して開山としたのが当寺である。天文七年（一五三八）境内界域を定め（「東は海道まで、西端は猿丸峠まで」永林寺文書）、天文十五年（一五四六）に堂宇がことごとく竣功し、翌一六年入仏大供養を行った。この際北条氏の肩入れもあって僧千人を招いて披露したという。北条氏が武蔵国を支配することを宣言する政治的な一大イベントであったのであろう。北条氏照もまたこの寺を崇敬し、これを再興したものである。この寺は戦国末期大石一族の外護をうけ、寺勢はすこぶる盛であり、多くの門末を有し今におよんでいる。寺の墓地には文化八年（一八一一）に建てられた大石定久の墓があり、両脇に家臣達等の墓が並んでいる。家臣達等の墓は後年、ここに集められたものと思われる。本稿はこの一群の墓碑と松戸市平賀にある日蓮宗「本土寺」の過去帳に記載された葛西城の大石氏について考察したものである。 　　 　　一　小金本土寺過去帳について 　千葉県松戸市平賀にある日蓮宗の名刹「本土寺」に伝えられた過去帳は東葛飾地方を中心とする周辺の豪族の動きが把握された房総の中世史解明となる貴重な史料となっている。その過去帳に次の大石氏関連の記載がある 。 　千葉県史料　中世篇　本土寺過去帳 　　大過去帳　下　廿四日　　　　　　　　　大過去帳　中　十八日 　（大）　　　　　明應六十二月　被　　　　　瀧山大石隼人佑殿御内 　　□石々見守殿　圓城寺平六殿　打　　　　　妙法善尼丙子九月 　　大過去帳　下　廿二日　　　　　　　　　　日光逆修同隼人佑殿 　　〔圓城寺平〕　　　　（マヽ） 　　　□□□□六殿　明應七庚 　　　　　　　　　　□月　午 　　　　　　　　　〔正〕 　　　石見守系大石氏系図（暫定試作版） 　　　　　　　　　　「紋所」いてうの葉二葉 大石為重―――――――――――――――――――――――――― 　　　　但馬守か ―――――――――――――――――――――――――――――― 　　　隼人佑、石見守 ――能重―――――――――――――――――――憲重――――― 　　　　武蔵、伊豆守護代歴任 ――信重―――――――――――――――――――憲重 ―――――――――――――――――――――――――――――― 　　　　石見守　　　　　　　　　　　　①　石見守 ――憲儀―――――――――――某―――――――――――――― 　　　　　　　　　　　　　――房重 ―――――――――――――――――――――――――――――― 　　②　石見守　　　　　　　　　　　　　　　③　石見守 ――某――――――――――――――某―――――――――――― 　　　文明年間、長尾春景 　　　　　太田道灌相争、活躍ス ―――――――――――――――――――――――――――――― 　　　④　石見守　　　　　　　⑤　石見守　　　　　　　　　　　　⑥　石見守 ――某――――――――某――――――――――――某 　　　大永五年葛西城　　　　永禄年間、関東幕　　　　　　　　　大石定久子 　　　　　に在宿　　　　　　　　注文、岩付衆　　　　　　　　　　　源四郎憲重か 　　　　　　　（栗原仲道「大石氏の成果と課題」『大石氏の研究』二一一頁） 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　② 「大過去帳」下、廿四日の「大石々見守殿」は石見守系大石系図（暫定試作版）のー某石見守―の人物に相当すると思われる。 　道灌状は文明八年（一四七六）より文明十二年（一四八〇）至るまでの各地の戦績報告である。この中に記載の大石々見守は次のように記されている。 一、河内御移り已後、景春所より大石々見守を倩、宝相寺、吉里宮内左衛門尉を差添え、御当家始中終の儀異見を尋ね候間、…… 千葉実胤事は、当方の縁者ニ渡られ候と雖も大石々見守を招き出され葛西へ越され候。公方様へ内々申さるゝ旨候。然りと雖も孝胤出頭の事候間、許容無きに依り農州辺え流落候。（前島康彦編著『太田氏の研究』二九六?三〇二頁） ○大石々見守の死因は文明八年（一四七六）の長尾景春の乱に起因し、太田道灌はこの乱に