第2节 本研究の目的及び方法 .doc

心身障害者の介護時間と生活機能について－１分間タイムスタディによる検証－ 山本 奈月，谷口 光治，住居 広士，國定 美香，宇野 真智子，山岡 喜美子， 松本 百合美，棚田 裕二，曳木 久美，三浦 美子（日本ケアワーク研究会） 【はじめに】 重症心身障害児施設での実習の際に，心身障害が重度で活動?参加が制限されている人ほど日常生活活動動作（以下ADLとする）面に対する介護の時間は多くなり，日常会話などの活動に対する職員との関わりが少なかった。軽度な方ではADL面に対する介護の時間は短いものの活動に対する職員との関わりが多いように感じた。文献によると，「今日では，医学的治療や障害者への社会的援助ではQOLへの関心が高まっている。治療や福祉的サービスにおける「人間らしさの尊重」が大きな課題となってきたからである」と述べている。一方で，「反応が少ないため，関わり合いが少なくなったり一方的になったりしがちである」とする文献や，「重症心身障害を持つ人たちの場合，その身体機能および精神機能の障害の重さなど発達上の問題が原因で自分から物や人に働きかけることが難しく，そのほとんどの場合を相手がやってくる，そしてそれを待っている受動的な状態にある」と述べる文献もある。これらより，身体的に重度で活動?参加に制限がある人ほど介護時間が多くなり，軽度な人ほど活動に対する時間が多いのではないか，両者の生活機能には差異があるのではないかと考えた。そこで，心身障害者の介護の現状を知るとともに，彼らの生活機能の向上について１分間タイムスタディによる介護時間で検証する。 【対象】 　N身体障害者療護施設に入所している脳性麻痺の方2名を対象とした。うち1名は身体障害者手帳3級で，ADLの一部に介助を要し，コミュニケーションがいくらか困難である方（女性?50歳），もう1名は身体障害者手帳2級で，ADL全介助，コミュニケーション能力は判断ができず伝達能力も具体的要求に限られる方（男性?48歳）とした。 また，K特別養護老人ホームの要介護者2名（2名共に女性?86歳，要介護４）を対照として調査を行った。 【方法】 調査日時：2004年8月25日（水） 10：00～11：00の1時間（Ｋ特別養護老人ホーム） 14：00～15：00の1時間（Ｎ身体障害者療護施設） 調査手技：１分間タイムスタディを用いた（サービス提供指標調査研究事業報告書時（1995年）を参照）。 【結果】 今回，介護者などの職員が症例に関わった時間を介護時間，職員が関わっていない時間を介護外時間としてまとめた。身体障害者療護施設での介護時間を図1，介護内容の比較を図2，意思疎通の内容の違いを図3，介護外時間の比較を図4に示した。介護時間の長さは心身障害度では有意差をみとめることができなかった。しかし，その内容?声かけは，Aさん（重度）は面に対するものがほとんどであったのに対し，さん（軽度）は活動に対するものが多くを占めていた。介護外時間については，さん（重度）とさん（軽度）を比較すると，さんは1人で過ごす時間がＡさん（重度）よりも少ないことが明らかとなった。 特別養護老人ホームの要介護者の結果は，2名とも介護時間は1時間中4分間という結果となった。介護内容については，おやつ準備，移動の介護のみであり，各2分ずつであった。 【考察】 今回の結果では，介護時間の長さは心身障害度では有意差を認めることができなかった。しかし，介護の内容，声かけの内容，介護外時間の過ごし方を比較してみると大きな違いがあることが明らかとなった。 介護の内容が異なる理由として，さん（重度）運動能力の制限，生活機能の制限から，に対する介護に重点がおかれ，声かけもに対する声かけが中心になっているためだと考えられる。 声かけの内容，介護時間外の過ごし方が異なる理由として，運動能力の制限の程度，生活機能の制限の程度があげられると考えた。文献より，「反応が少ないため，関わり合いが少なくなったり一方的になったりしがちである」，「運動能力の制限，知的障害のために，他人との意思疎通に困難がみられる」，「自分から物や人に働きかけることが難しく，そのほとんどの場合を相手がやってくる，そしてそれを待っている受動的な状態にある」ということが言える。 今回，特別養護老人ホームの要介護者でも１分間タイムスタディを用いて同じ内容で調査を行った。この結果は，2名とも1時間中車椅子に座り，他者との関わりは少なかったという結果である。高齢者は高度の痴呆を伴い，自発性が低下していることが起因していると考えられた。日中の活動の場として様々な事業を再編し実際に施行したときに，自ら環境に働きかけることができない重度の心身障害者のケースで自発性が低下する状況になってしまうと，ます