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横紋筋肉腫 （小児内科医の立場から） １． 病気のあらまし 横紋筋肉腫は、自分の意思で体を動かすときに使 う筋肉 （骨格筋 といいます）に将来なるはずの未熟な細胞から発 生 したがんと考えられています。実際には、骨格筋以外、 膀胱や前立腺、睾丸、鼻の中、眼の奥、腹部や胸部の内臓、 肛門などから発生することも少なくありません。横紋筋肉 腫の患者の約7割が10歳未満 （1歳未満は5％）で診断され ますが、思春期の若者や、まれに成人に発生することもあ ります。小児がんの5～8％を占めるに過ぎない比較的まれ な腫瘍ですが、筋肉など身体の軟 らかい部分から発生する がん （軟部肉腫）のなかでは、小児で最も頻度の高いがん です。 1 ２．診断 ?リスク群の評価 横紋筋肉腫の治療を始める前には、まず治療の強さや期 間など治療内容が決まる 「リスク群」を評価 し、決定する 必要があります。 リスク群の決定には、 (1)腫瘍が発生 し た体の場所 (2)腫瘍の大きさ(3)腫瘍の周囲の リンパ節に 転移が有るか無いか(4)腫瘍から遠 く離れた体の リンパ節 に転移が有るか無いか(5)最初の手術で腫瘍がどれほど取 れたか(6)腫瘍の病理組織のタイプが横紋筋肉腫のどのタ イプか、の情報が必要です。これ らの情報は横紋筋肉腫の 予後 （治 りやすさ）因子 と呼ばれます。 (1)腫瘍の発生場所 （発生部位）は、これまでの治療成 績の結果から、 「予後良好部位 （比較的治 りやすい場所）」 と 「予後不良部位 （比較的治 りにくい場所）」に大別 され ます。前者は、①眼の奥、②頭や首の周囲、③睾丸や子宮 ? 膣などの泌尿生殖器、④胆汁の通 り道 （胆道）がこれにあ たり、後者は、鼻の奥 （副鼻腔）や、膀胱、前立腺、手足、 お腹や背中など、前者以外のすべての場所がこれにあたり ます。 横紋筋 肉腫が発見 されたときの病気の拡がりを表す指 標は、ステージといい、(1)から(4)の予後因子により、ス テージ1から4まで4段階に分けられます。ステージと呼ぶ 病期分類は、大人のがんでも一般的に使われていますが、 横紋筋肉腫のステージにユニークな点は、「予後良好部位」 に発生 した腫瘍であれば、遠隔転移 （肺や肝臓、骨、骨髄、 腫瘍から遠 くのリンパ節などにみられることがあります） 2 さえなければ、(2)腫瘍の大きさや (3)腫瘍の周囲のリンパ 節転移の有無にかかわらず、最も予後の良い （治る率が高 い）ステージ1に分類 される点です。 (2)腫瘍の大きさは、直径が5cm以下か、5cmを超えるか で二つに分けられます。 (4)遠隔転移が有るか無いかは、 大変重要です。発見されたときから遠隔転移がある例では 強力な治療が必要 となります。脊髄 （背骨の中を通ってい る神経）や脳に腫瘍が進行 している例の治療は極めて厳 し くなります。 (5)最初の手術で腫瘍がどれほど取 りきれたかは、グル ープとして分類 され、グループ IからIVまであります。グ ループIは、最初の手術で腫瘍が完全にとりきれた場合、 グループIIは、顕微鏡で見ると切 り口に腫瘍細胞が残って いた場合か、腫瘍は完全にとりきれたが周囲のリンパ節に 転移があった場合、グループIIIは、腫瘍の一部 しか取れ なかった場合、グループIVは、腫瘍の取 り切れ方のいかん にかかわらず、最初の手術時すでに遠隔転移のあった場合 です。 (6)腫瘍の切 り口を病理医が顕微鏡でみて分類するのが 病理組織型です。横紋筋肉腫 と一 口に言っても、紡錘細胞 型、葡萄状型、退形成型、胎児型群あるいは、多形型、胞 巣型などとさらに細かく分類 されます。前4者は胎児型群、 後2者は胞巣型群 として大きく二つのグループに分類 され ます。後者、なかでもPAX3-FKHRという遺伝子異常をもつ 横紋筋肉腫は最も悪性度が高く、より強力な治療が必要 と 3 なります。 以上のリスク群を決めるために必要な情報は、CT、MRI、 骨シンチや レントゲンなどの画像検査 と骨髄穿刺検査 （腰 骨などから血液の元の細胞を一部取 り出して調べます）