無機系消臭剤「ケスモン」.pdfVIP

●無機系消臭剤「ケスモン」 高機能材料研究所　第五研究グループ 蛭川　敏郎 1 はじめに 近年、消費者の快適な生活空間を求める声の高まりと共に、 身の回りに存在する様々なにおいに対して、嫌悪感をもつ人 が多くなってきた。当社が新たに開発した無機系消臭剤ケス モンは、アンモニア臭、ホルムアルデヒド臭、タバコ臭をはじ めとする様々な悪臭を、短時間でしかも低濃度レベルまで消 臭できる画期的な材料である。同時に安全性?耐熱性に優れ、 微粒子粉末であるため樹脂やフィルムへの練込み加工、紙? 不織布への後加工、塗料?インキへの添加等、多くの分野に 様々な形態で使用することができる。 2 消臭剤とは 従来から種々の消臭剤が開発され市販されている。その中 で消臭剤という言葉が、「芳香剤」、「防臭剤」、「脱臭剤」、「消 臭剤」の区別なく使われるため、多くの消費者がその本当の 意味を誤解しているものと思われる。以下にこの区別につい て簡単に説明する 1） 。 「芳香剤」は不快臭を芳香でマスキングするほか、不快臭 の性質を調和?改善させてにおいの質を感覚的に変えるもの であって悪臭自体を消すものではない。 また、「防臭剤」は悪臭を直接消すのではなく、臭気発生要 因を予め摘むことで消臭するものである。例えば、腐敗臭や カビ臭を抑えるために抗菌剤および防カビ剤を使用すること がある。 これに対し、「脱臭剤」と「消臭剤」は大きな意味で両者と も悪臭を吸着すると考えて良いが、消臭機構が異ることによ り消臭性能に差がある。「脱臭剤」は活性炭、シリカゲル、活 性白土などの多孔質材料の細孔に悪臭が物理的に吸着するこ とで消臭するものであり、悪臭そのものに変化はないのに対 して、「消臭剤」は塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム等を用い た酸?アルカリの中和作用や、酸化?還元作用などの化学反 応を利用して悪臭を他の物質に変化させ除去するものである。 また、活性炭などの元来脱臭剤である材料を塩酸、リン酸 などで処理し化学消臭効果を加えた添着活性炭は「消臭剤」 の一種と考えることができる。 3 ケスモンの特徴 消臭剤を応用した商品市場では古くから活性炭などを利用 した開発が行われていたが、数年前にタバコ消臭繊維が発表 されてから一段と活発となった 2） 。これと前後して多くの消臭 剤メーカーから有機系、無機系など様々な商品が開発されて きたが、消臭性能（即効性、持続性）や繊維等へ消臭剤を添 加し加工した場合の耐熱性、着色性、加工性などに問題を生 じる材料が少なくなかった。 当社では無機材料をベースとした機能性材料の開発をして おり、これまでに蓄積したイオン交換や有機－無機ハイブリ ットの技術?ノウハウを利用して、優れた消臭性と繊維、樹 脂等への加工性をもった消臭剤『ケスモン』を開発した。 3.1 様々な悪臭に対応する『NS、TNSシリーズ』 ケスモンは化学反応により消臭するため、悪臭ガスの性質 （塩基性、酸性、アルデヒド系、硫黄系）に対応した『NSシリ ーズ』がある。表1に代表的グレードを、図1にその消臭機構 の模式図を示した。 アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性ガスは陽イオン 交換能を有する『NS－10』とイオン結合することにより、ま た、酢酸、吉草酸などの酸性ガスは陰イオン交換能を有する 『NS－70』、『NS－80E』とイオン結合することによりそれぞれ 消臭される。 アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド系ガ スはアミン系化合物と反応させシッフ塩とすることで消臭さ れる。特定のアミン系化合物と多孔質のシリカ系材料をハイ ブリットさせたものが『NS－103』である。 硫化水素、メチルメルカプタンなどの硫黄系ガスは、これ らと反応性の高い金属イオンをその活性を保ったまま陽イオ ン交換能を有する材料に担持させた『NS－10C』、『NS－10Z』 などで消臭される。 一般的に、臭気の問題は単一臭気よりも複合臭気として起 こることが多い。ケスモンには複合臭気の代表的な例であるタ バコ臭に対応した『TNSシリーズ』がある。これは、繊維業界 のタバコ消臭性試験法で定められた消臭すべき悪臭（アセトア ルデヒド、アンモニア、酢酸、硫化水素、ピリジン） 3） を消臭 するために、各種ケスモンをバランス良く配合したものである。 東亞合成研究年報 TREND 2000 第3号52 ー新製品紹介 ー 表1 各悪臭に対して有効なケスモン 3.2 消臭速度 消臭剤の実質的な性能を評価する上で最も重要な項目の1つ に消臭速度（即効性）がある。臭気発生源からの拡散よりも 消臭性能が劣れば十分な効果は得られない。図2にケスモン 0.1gに所定濃度の悪臭ガス（1L）を注入した時の濃度変化を