新しい信号処理を用いた粗さ曲線の決定法.pdfVIP

＊1 技術支援部 機械電子室 ＊2 尾張事務所 研究論文 新しい信号処理を用いた粗さ曲線の決定法 伊藤俊治＊１、水野和康＊1、松崎 洋＊2 Definition of Surface Roughness Curve by Using New Signal Processing Shunji ITO, Kazuyasu MIZUNO and Yoh MATSUZAKI Technical Consulting Division,AITEC*1 Owari Regional Office*2 表面粗さとうねりを分離する方法として、従来のガウシアンフィルタ、ドベッシーウェーブレット、リ フティングスキーム、ジャンの方法を比較検討した。粗さ試料面としては旋削面、研削面、放電加工面を 選択した。その結果、これらの中では、ドベッシーウェーブレットと従来のガウシアンフィルタが有望で あることが分かった。また、表面粗さの大きさ、平均波長、複雑さを変数とする関数を構成し、関数値か らウェーブレット変換の多重解像度解析におけるレベルを設定する方法を考案した。この方法によれば、 従来のガウシアンフィルタ（カットオフ値λc：0.8mm）よりも、推定精度が十数％向上することが分かっ た。 １．はじめに 粗さ曲線は、ＪＩＳによればカットオフ値λc の高域 フィルタによって、断面曲線から長波長成分を遮断して 得るとされ、フィルタとしては位相補償型のガウシアン フィルタを用いると規格化されている。 一方、最近の信号処理の発達は目覚ましく、例えば、 ウェーブレット変換によれば、不連続信号の抽出、ある いは除去も可能になった。この手法は、1980 年頃にモレ ーにより提案されたものであるが、第１世代とされるド ベッシーウェーブレット 1)、1994 年スウェルデンにより 発表され第２世代に位置づけられるリフティングスキー ム 2)などがある。 一般に、ウェーブレット変換では、第１世代、第２世 代とも、変動する信号は任意のレベルまで解像度の低下 した系列データと、レベル０から任意のレベルに至るま でのウェーブレット成分の和で表現できる。さらに、信 号を１から任意のレベルＪまでのＪ個の解像度、すなわ ち多重の解像度で解析することを多重解像度解析と呼び、 特定のレベルの解像度信号を全てゼロと設定した後、ウ ェーブレット逆変換するとフィルタとしても使用できる ことが知られている。チェン 3)、ジャン 4)らは表面粗さ 測定のうねり除去にウェーブレット変換による多重解像 度解析の適用を試みている。しかし、レベル設定の方法 には言及していない。 本研究では、断面曲線からうねりを除去し、粗さ曲線 を導出するフィルタとして、従来のガウシアンフィルタ、 ドベッシーウェーブレット、リフティングスキーム、ジ ャンの方法を比較検討した。さらに、ウェーブレット変 換の多重解像度解析を適用するときのレベル設定の方法、 及び表面粗さの大きさ、平均波長、複雑さを基準とする 新しいカットオフ値λc の決定方法を提案した。 ２．各種うねりの除去性能の比較 粗さ曲線とうねり曲線は、どちらかが推定されれば、 断面曲線からこれを除去することによって他方が求まる 関係にある。そこで、断面曲線から、うねり曲線を除去 し、粗さ曲線を求める手法として、ガウシアンフィルタ、 ドベッシーウェーブレット、リフティングスキーム、ジ ャンの４方法を比較した。 2.1 段差うねりの除去性能 うねり曲線として、評価長さ 2.56mm、サンプリング点 数 2048 で、その中央箇所において、高さ１の段差を持つ 離散的なステップ曲線を考えた。また、粗さ曲線として、 振幅 1、山数 25 の正弦波を想定し、両者を加算した図１ に示すような断面曲線を仮想した。これらの仮想断面曲 線に４方法を適用し、うねり除去性能を比較した。 ガウシアンフィルタはローパスフィルタの一種なので、 直接、うねり曲線を推定できるが、ウェーブレット変換 の場合には、先ず多重解像度解析を用いた方法で粗さ曲 線を推定し、これを断面曲線から除去することによって、 うねり曲線を求めた。 各種手法で求めた推定うねり曲線を図２に表す。(a) はλc＝0.8mm のガウシアンフィルタの結果である。本 図１ 仮想した断面曲線 (a)??????????(λc:0.8mm) (