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微分方程式で理解する反応速度論

94 数式?数学キーワード 1 階常微分方程式,変数分離法,積分形速度式 Basic Knowledge of Mathematical Theories of Analytical Chemistry―Fundamentals of Chemical Kinetics and Differ- ential Equation. ぶんせき   数式で理解する分析化学 微分方程式で理解する反応速度論 小 木 修 1 は じ め に 反応速度論では,化学反応の速度について論ずる。す なわち,どのような速度で反応物が消費され生成物が生 成するのか,またその速度が触媒の有無などの様々な条 件に対応してどのように変化するのか,さらに反応がど のような段階を経て起こるのかについて研究する。 任意の時刻における化学反応の速度を与えるのが,速 度式である。速度式は,時間を独立変数とする微分方程 式である。任意の時刻における反応物および生成物の濃 度を予測するためには,この微分方程式を解き,その一 般解である積分形速度式を求める。 そこで,本稿ではまず,反応速度論に必要な微分方程 式の初歩的な知識について説明する。次に,反応のタイ プ(次数)ごとに,積分形速度式の求め方を示す。最後 に,反応速度論の研究に使われる実験法を説明する。な お,本稿の主な内容は文献 1 を参考にした。その他, 数学については文献 2 および 3 を,また,反応速度論 については文献 4 および 5 を参考にした。 2 微分方程式とその解法 2?1 微分方程式 未知関数とその導関数を含む方程式を,微分方程式と いう。独立変数の数が一つの場合には常微分方程式,二 つ以上の場合には偏微分方程式という。反応速度論で は,時間を独立変数とする常微分方程式を取り扱う。ま た,微分方程式に含まれる導関数の最高階のものが n 階の導関数であるとき,それを n 階微分方程式とい う。従って,速度式は時間を独立変数とする 1 階常微 分方程式である。 次に,微分方程式を満たす関数を解という。n 階の微 分方程式の一般解は,n 個の任意定数を含む解である。 そして,一般解における任意定数を特別な値にして得ら れる解を特解という。反応速度論では,ある時刻での反 応物の濃度を与えて,その後の反応物の濃度の時間変化 を予測する。ここで,ある時刻で与える条件を初期条件 という。そして,初期条件を満たすように速度式を解く ということは,一般解から特解を求めることに相当する。 2?2 微分方程式の解法 微分方程式には多くの解法があるが,本稿では最も基 本的な解法である,変数分離法について説明する。 一般に dx dt = f(x)g(t) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.1) と書けるときには,左辺,右辺それぞれに,同じ変数を まとめる。 dx f(x) = g(t)dt . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.2) ここで,式(2.2)の左辺,右辺はそれぞれ独立に積分す ることができる。すなわち, f dx f(x) =fg(t)dt . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.3) となる。この解法を変数分離法と呼ぶ。 例えば,3 章で説明する式 dx dt =- kx . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.4) を変数分離法で解いてみる。まず,左辺に x,右辺に t を集め, f dx x =- kfdt . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.5) 積分すると, ln x =- kt + C . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.6) ここで,C は積分定数である。また,対数を外すと x = Ae-kt . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .(2.7) ここで,A=eC である。これは微分方程式(2.4)の一般 解であり,積分定数は初期条件,例えば t=0 のときの 95ぶん

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