カナダにおけるハーグ条約（国際的な子の奪取の民事上の側面に関する .pdfVIP

ハーグ条約の実施に関連する親権・監護権に関する外国法令の調査報告書 カナダにおけるハーグ条約（国際的な子の奪取の民事上の側面に関する 条約）の取扱いについての解説、および関連条文の抄訳（原文対訳） 監修：小川富之（近畿大学法学部） 解説：清末愛砂（国立大学法人室蘭工業大学大学院工学研究科） 翻訳：清末愛砂（国立大学法人室蘭工業大学大学院工学研究科） 宍戸育世（近畿大学大学院法学研究科博士前期課程） なお、本研究における条文抄訳の作業分担は、以下の通りである。 • 清末愛砂：ブリティッシュ・コロンビア州家族法2 編、同4 編8 節、同9 編、オンタリオ 州子ども修正法3 編34 条－46 条、カナダ刑法典282 条・283 条 • 宍戸育世：カナダ離婚法、ブリティッシュ・コロンビア州家族法1 編、同4 編 1 節－7 節、 オンタリオ州子ども修正法3 編 18 条－33 条 2015 年3 月 2015 年3 月31 日 カナダにおけるハーグ条約（国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約）の取扱い －ブリティッシュ・コロンビア州とオンタリオ州の場合－ 清末愛砂（室蘭工業大学大学院工学研究科） 1. はじめに 1983 年に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」（以下「ハーグ条約」という。）の 1 批准国となったカナダは、現在、71 か国との間で同条約の適用を行っている（2015 年3 月現在）。 同国では、すべての州と準州において、同条約が効力を有している。 ハーグ条約にかかる連邦上の中央当局は、司法大臣（Minister of Justice and Attorney General） であるが、実務上は外務貿易開発省（Department of Foreign Affairs, Trade and Development） 内の司法サービス課（Justice Legal Services Unit）がその代理を務めている。一方、同国では、 各州・準州に各々の中央当局が設置されており、これらの中央当局が、国際的な子の奪取とその 返還にかかる個別のケースの対応にあたっている。これらの中央当局は、国境を越えた子の返還 に関する要請や返還命令等の施行に関する情報交換を互いに行うことで、相互協力を図ってい 2 る 。 本稿では、カナダにおけるハーグ条約の取り扱いを示す各州法について、ブリティッシュ・コ ロンビア州とオンタリオ州に着目し、概説する。 2. 両州におけるハーグ条約関連の条文 ハーグ条約の適用に関するブリティッシュ・コロンビア州とオンタリオ州の関連州法とその内 容は、以下の通りである。 （1）ブリティッシュ・コロンビア州 ブリティッシュ・コロンビア州におけるハーグ条約の取扱いは、家族法の第4 編（子の世話及 び養育時間）第8 節（国際的な子の奪取）80 条（全7 項）で規律されている。 ハーグ条約上の定義は第8 節に適用されることになっており（80 条2 項）、また同条約は、ブ 1 Foreign Affairs, Trade and Development, Canada Welcomes Japan’s Ratification of Hague Abduction Convention (April 1, 2014), http ://ernational.gc.ca/media/state-etat/news-communiques/2014/04/01a.aspx?lang=eng （2015 年3 月 14 日現在） 2 Foreign Affairs, Trade and Development, International Child, International Child Abduction: A Guidebook for Left -Behind Parents, http://travel.gc.ca/travelling/publications/international-child-abductions （201