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ニューヨークだより2015 年2 月 米国における人工知能に関する取り組みの現状 八山 幸司 JETRO/IPA New York 1 はじめに IT 技術の発達によって社会に様々な変化をもたらしてきた情報革命だが、近年、人工知能を使った技術革 新が情報化社会の変化を加速させるAI （Artificial Intelligence）革命に注目が集まっている。コンピューター やインターネットといった IT 技術は、ビジネスや生活の中で人々の行動をサポートするツールとしての役割 1 を果たしてきた。しかしながら、自律型ロボット、IoT（Internet of Things） 、ビッグデータといった人工知能技 術をベースとした技術は、人間の作業をサポートするだけでなく、コンピューターが考えて人間に代わって作 業を行うことが出来るようになる。オックスフォード大学の調査によれば、米国の 66%の労働が人工知能置 2 き換わると見られている 。無人航空機（ドローン）を使った配送システム、ロボットカーによる自動運転、リア ルタイム翻訳など、人間の知性を必要とした作業が人工知能によって実現しようとしている。今号では、新し い産業革命の技術として注目を集める人工知能について取り上げる。 まず、米国の代表的な IT 企業で行われている人工知能を使った取り組みや、人工知能研究の歴史と現状 について取り上げる。Google 社では、人工知能に関連した様々な人材や企業を取り込んで研究を進めて おり、同社の研究からは革新的な研究成果も出てきている。IBM 社では、同社が研究を続けている人工知 能「ワトソン」の商業化を進めており、様々な企業と提携を行っている。Microsoft 社は、Skype のリアルタイ ム翻訳や革新的な画像認識技術を発表している。Amazon 社では、予測分析を利用した配送システム、ド ローンを使った配送、倉庫における自律ロボットの活用など、迅速な配送を行うためのシステムに人工知能 を利用している。Facebook 社は DeepFace と呼ばれる顔認識技術や人工知能のオープンソース化などを 進めている。人工知能研究は AI の冬（AI Winter）と呼ばれる研究の停滞時期があったものの、ビッグデー タなどの登場によりデータを使って人工知能に学習をさせる機械学習が進んだことで、一気に実用化が進 んでおり、クラウドを通した機械学習を提供するサービスも登場している。 次に、人工知能の市場動向について取り上げる。人工知能の市場には大きく分けて、自律型ロボット、エキ スパートシステム、音声アシスタント、組み込みシステム、ニューロコンピューターといったものがあるが、 2024 年にはエキスパートシステムと自律型ロボットが市場を大きく占めると見られている。人工知能関連ベ ンチャーへの投資も増えており、特に、ディープラーニングや予測分析を研究する企業への投資の増加して いる。この他、人工知能関連のベンチャー企業についても取り上げる。 人工知能の最新動向では、産業界における人工知能の活用、研究機関での人工知能研究の動向、大学研 究機関における取り組みについて取り上げる。金融企業では、詐欺の防止のために音声認証や顔認証を 活用しており、人工知能を使ったトレーディングなども行われている。報道・メディアでは、ニュース記事やウ ェブサイトの自動作成に人工知能が使われている。小売業や運送業では、ドローンを使った配送システム や、配送ルートの選択に人工知能を利用している。行政における人工知能の活用では、文書のデジタル化 に文字認識を活用している。最新の研究動向では、ディープラーニングの最新の研究成果やニューロモー フィックチップといった、将来的な人工知能の活用に向けた研究を紹介する。また最先端の人工知能研究を 行う大学として、スタンフォード大学、カーネギーメロン大学、マサチューセッツ大学について紹介する。 1 モノのインターネット。スマートハウスやス