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臨床検査を終了した検体の業務,教育,研究のための使用について-日
-58 :2 ・2010 -
会 告
臨床検査を終了した検体の業務,教育,研究のための使用について
-日本臨床検査医学会の見解-
ヒトを対象とする医学研究に おけるインフォームドコンセント (十分な説明に基づく同意)の精神は
1947 年のニュールンベルグ倫理綱領には じまり,1964 年の世界医師会総会でヘルシンキ宣言として採
択された。その基本は,被験者 (被検者)が自分の意思に反して生命,健康,プライバシーおよび尊厳
について不利益を被らないようにすることである。2000 年に行われたヘルシンキ宣言の改訂において,
個人を特定できるヒト試料を用いた研究もヒトを対象とする医学研究に含まれることが確認された。
目的検査終了後の臨床検査検体 1)の残存部分 (以下,残存検体)は医療廃棄物として処理されるが,そ
の一部は従来,業務 2),教育 3)や研究 4)にも活用されて来た。これまでに,残存検体を用いた研究から
多くの知見が得られ,被検者 (患者等)の病態のより詳細な解明のみならず臨床医学の発展に大きく寄
与してきたところである。しかしなが ら,患者中心のより良い医療の促進が叫ばれる中で,上述の経
緯より残存検体の取扱いについて明確な指針を定める必要性が生じた。日本臨床検査医学会は,2000
年 12 月に臨床検査に関連する種々の倫理問題を議論する倫理委員会を組織し,残存検体の適切な取扱
いについて検討を重ね,2002 年 5 月に「臨床検査 を終了した検体の業務,教育,研究のための使用に
ついて-日本臨床検査医学会の見解-」5)を公表した。その後,2002 年 6 月に疫学研究に関する倫理指
針 6),続いて 2003 年 7 月に臨床研究に関する倫理指針 7)が制定され,2005 年 4 月に個人情報の保護に
関する法律 8)が施行され,医療 ・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライ
ン 9)が制定された。さらに,2008 年に行われたヘルシンキ宣言の改訂において,ヒト試料を用いた研
究に関する規定が充実し,これを受けて臨床研究に関する倫理指針 7)が改正され,ヒト試料を用いた研
究の具体的な要件が記載された。こう した流れを受けて,日本臨床検査医学会の見解を現状に見合っ
たものに改訂することとなり,倫理委員会の基本的見解を以下のように取りまとめた。
遺伝学的検査に関しては,2001 年 3 月に制定されたヒトゲノム ・遺伝子解析研究に関する倫理指針 10)
のほか,医療機関での検査と衛生検査所での受託について指針が出されている 11)12)。また,病理検体
の保管 ・管理 ・利用 13) と衛生検査所での検査済み検体の廃棄 14) についても指針が出されており,それ
らをあわせて順守するものとする。
1.臨床検査室の管理者 (以下,管理者)および業務 ・研究担当者はいずれも,被検者の個人情報や検
査データについての守秘義務を順守し,被検者が不利益を被らないようにしなければならない。
なお,管理体制については,各施設内で改めて討議し,定める必要がある。
2.残存検体の「業務への使用」は,通常,プール化 15)および/ または連結不可能匿名化 16) して行う
が,連結可能匿名化 16) して行う場合は,責任者を明確にした上で,被検者の個人情報に関する守
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-臨 床 病 理-
秘を厳重にする。「教育のための使用」についても,「業務への使用」に準じて処理,管理され
なければならない。
3.残存検体の「研究への利用」にあたっては,臨床研究に関する倫理指針 7) を順守する。原則とし
て,被検者から同意を取得して同意に関する記録を作成し,当該施設の倫理委員会の承認と施設
長の許可を得て研究を実施する。ただし,同意を得ることが困難なときは,試料が連結不可能匿
名化されている場合,あるいは当該研究が公衆衛生の向上のために特に必要であって,当該研究
に関する試料等の利用目的を含
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