[いじめ問題から捉える逸脱]-socio.k.kyoto.pdfVIP

社会学基礎論学期末小論文 [いじめ問題から捉える逸脱] 序論 　我々の生きている日常社会において、集団と逸脱の関係は常に隣接した関係に有り、社 会規範に基づいた集団には必ず逸脱が含まれ、また逸脱の定義やそのあり方はそれぞれの 規範や準拠集団のなかで異なる。今回は「いじめ」を通して、現代の教育現場における逸 脱行為がどのようなものであるかの考察及び議論をしていきたい。 1.規範に内包するいじめ 　逸脱行為とは、序論に示したように規範と隣接した関係にある。ある社会集団ではその 中における慣習や習律が生まれ、常にその集団の構成員が規範に同調しているかを監視す るサンクションが行われ、サンクションにより社会集団の中において、規範に同調する者 には報酬を、逸脱行為を行う者には制裁が加えられる。ここではサンクションが社会集団 の構成員を規範の中に維持し、サンクションに基づく報酬や制裁により全員の協調性を高 めようとするものであるかのように思われる。ここでは逸脱とは二次的に発生した結果に すぎない。しかし、いじめ問題を捉えることでその考えに一つの論点を発見することがで きる。 　「いじめ」は現代の教育的現場において重大な問題として様々な議論が行われている。 いじめとは学校などの集団内で、ある特定の人物をターゲットにし、その人物を逸脱者と 見なした上で攻撃するという準拠集団内での行為である。上に述べたように、逸脱行為に は罰や制裁が与えられ、学校において何かしらの規範に同調しない人物は準拠集団からの 罰や制裁が加えられる。いじめにおいてそれは集団での嫌がらせ行為や無視などの形で表 される。その目的は帰属意識の確認であったり、単純なる娯楽であったりするのだが、こ こでの注目点として「いじめのターゲットが比較的頻繁に変動しうる」ということが挙げ られる。実際に、中学時代に女子校に通っていた私の友人の多くから、それぞれの母校で 「常にいじめられるターゲットが交代で、ローテーションして変わっていた。」という話 を聞いた事がある。仮に、逸脱した人間に、規範に基づいて評価された結果としていじめ という制裁が与えられるのであれば、制裁の対象が交代していくとは考えにくい。いじめ においては、いじめられる対象の席があらかじめ確保されており、その席を埋めるという 形でいじめ対象者が強制的に、まるで必ず生まれるババ抜きの敗者のように選出される。 ここにおける逸脱行為は「強制的」であり、「必然的」である。慣習や習率から規範が生 まれ、そこから逸脱が生まれるという冒頭で述べた順序とは全く逆のメカニズムであり、 逸脱はもはや規範と隣接する者ではなく、準拠集団における必須要素として成り立ってい ると考えられる。つまり規範としての逸脱やそれに加えられる制裁という目的地から逆算 された、結果を求めるための手段としてサンクションが行われるのである。 　いじめを執 り行うことによって、いじめ対象者以外の集団は、共通の意識の対象ができ ることによって安心感が生まれて結束する。そこには逸脱者であるいじめ対象者をも含ん だ「規範」が存在 し、そこにおいては誰一人として逸脱者ではない。いじめとは「規範を 逸脱した者に対する罰を与える」という「規範」である。 2.規範のなかに位置する規範 　学校における準拠集団といっても、それぞれの準拠集団同士が相互に関係して存在 して おり、集団には必ず規範が存在 し、そこには法が自ずと生まれる。その法 とは校則である 場合もあれば、抽象的な暗黙の規則である場合もある。学校に校則 という規範があり、そ の中でクラス内の規範があり、さらにその中で仲の良い団体のローカルな規範が生まれる。 つまり我々は何 にも及ぶ規範の の中心で生活 しているのである。 　デュルケームのアノミーとは、社会的統制が衰退 した状態を指すが、このアノミー状態 において、いじめが起こりやすいと考えられる。規範をつくるということは、ある領域 A とB の間に境界線を引くということを意味する。その境界を踏み越えることで逸脱が行わ れるにであるが、この境界線が人為的なものであるということを踏まえると、いじめとい う必要な状況を作 り出すことを目的とした境界線引きがされているケースが多く見られる。 「A ちゃんだけが知 らない話題