スポーツ選手における腰痛予防対策.PDF

スポーツ傷害（J. sports Injury）Vol. 17：56−62　2012 スポーツ選手における腰痛予防対策 八王子スポーツ整形外科　リハビリテーション部門 佐藤　正裕 帝京大学医学部附属溝口病院　整形外科 西良　浩一 八王子スポーツ整形外科 間瀬　泰克 はじめに 部の筋や椎 間板への持続的なス トレスにより，筋 ・筋膜性 腰痛や腰椎椎 間板ヘルニアの発生要因となる．伸展型腰痛 腰痛 はヒ トが一生のうちに85 ～ 95％が一度は経験する では，体操競技やバ レエ，フィギアスケー トなどの腰椎過 1） 伸展や前弯の増強の繰 り返 しを必要 とする動作で多 く，椎 といわれ ，2003 年の 日本整形外科学会 プロジェク ト委 2） 体や椎 間関節への圧縮ス トレスにより椎 間関節性の腰痛が 員会 による調査 によれば ，治療 を必要 とする腰痛の現有 病率 は 歳代 で男性 . ％，女性 . ％， 歳代 で男性 発生 しやすい．回旋型腰痛では， ゴルフやテニスのような 10 6 9 5 7 20 . ％，女性 . ％， 歳代で男性 . ％，女性 . ％ スウィングが必要なスポーツやバ レーボールのスパイクの 15 9 14 5 30 25 2 18 9 とされる．一方，スポーツ選手の腰痛発生率は種 目により ように，回旋に加 えて側屈や伸展の複合動作が同時に加わ 3）～ 9） るため腰椎分離 ・すべ り症などが発生すると考えられてい 異なるがおおよそ20 ～ 70％とされ ，同年代の一般人 より腰痛の発生率は高い． る．また運動方向による分類のほかにレス リングやアメリ 腰痛は発生メカニズムのス トレス様式か ら分類でき，腰 カンフッ トボールのようなコンタク トによるものに分けら 部を前屈，後屈，回旋で痛みが再現 されるかによって屈曲 れる． 型腰痛，伸展型腰痛，回旋型腰痛およびこれ らの複合型に 以上か ら，スポーツにおける腰痛はプレー中に体幹の可 分 け られる （図 ）．屈 曲型腰痛では，ボー ト競技 の よう 動性 を大 きく要求 されるスポーツや，強い剛体 としての安 1 に屈曲動作 を反復 した り，スケー ト競技や 自転車競技のよ 定性が要求 させるスポーツで多 く発生するということが言 うに屈曲姿勢 を維持 した り，また様々なスポーツで必要な え，スポーツ選手の腰痛 を予防するには多 くの要因を考え 腰 を落 とした構 えが必要なスポーツでの報告が多 く，腰背 る必要性がある． 図1．腰痛発生メカニズムのストレス様式分類 — 56 — スポーツにおける腰痛発生のリスクファクター 腰痛予防エクササイズのEBM スポーツ選手における腰痛治療 においては，stability （安 アス リー トの腰痛予防エクササイズについて報告 した 定性） とmobility （可動性） といった観点で推察すると病 ものは非常