機器を用いた皮膚色の定量に関する種々の問題点.PDFVIP

日皮会誌:105 (1), 43-49, 1995 (平７） 機器を用いた皮膚色の定量に関する種々の問題点 白井　志郎 滝脇　弘嗣 宇都宮正裕 　　　　　　　　　　要　　旨 ある．これらの方法はより客観的な数値データを与え 　電子機器の発展に伴い，これまで視診で行われてき るため，より科学的とみなしうる反面，えられた数値 た皮膚反応や皮疹の程度の評価を皮膚色定量用機器で が何を指標にして計測されているのか熟知していない 行った報告が増加している．皮膚色のデータ解釈をよ と間違った解釈を下してしまうこともある． り正確に行うため，皮膚色の部位差と身近な要因が皮 　先に筆者らは, CCDカメラをセンサとするビデオマ 膚色に与える変化をコンピュータを接続したビデオマ イクロスコープが皮膚色定量に好都合であることを報 イクロスコープで定量した．その結果，皮膚の“赤み” 告した11)この装置を用いて皮膚色の部位による変動 の程度を皮膚の吸光率を用いた指数（紅斑指数）で与 とデータの解釈に関する考察を行い，皮膚色に影響を える方法では，被検部位の色素沈着が強いほどこの値 与える可能性がある２，３の日常的因子について定量 は過大評価された．また同一部位の経時計測では，紅 的に検討した結果，いくらかの問題点を見出したので 斑指数は午後に強くなる傾向があった．食後20分で有 報告したい． 意な紅斑指数の上昇がみられたが，軽度の運動や喫煙 　　　　　　　　　　対象と方法 では一定した皮膚色変化を認めなかった．前腕の皮膚 　1.使用機器 色は短時間の肢位変化でも影響され，紅斑指数のみな 　皮膚色の計測にはビデオマイクロスコープ（デルマ らず，“黒ざの程度いわゆるメラニン指数も有意に変 スコープ，ヤヨイ，東京）にパーソナルコンピュータ 化した．以上の結果から，皮膚色定量を機器によって (PC9801DA, NEC,東京）を接続したものを用いた． 行う際の問題点を提示すると共に，その回避法につい その原理，方法，信頼性などについては既報したが11) ても考察した． 要約すると，ビデオマイクロスコープはＣＣＤカメラ 内蔵で25倍レンズを用いると10×11mm2の皮膚表面 　　　　　　　　　　はじめに 像をモニタリングできる．プローブには白色フードを 　皮疹の重症度やその経過，紫外線やアレルゲンに対 装着し，外光を遮断してある．えられた像は赤，緑， する皮膚反応の評価はこれまで主に熟練した皮膚科医 青（ＲＧＢ）に相当する３つの基本波長帯（バンド）で の視診で行われてきた．定量のためには皮疹もしくは の像を加法混色したものである．これら３バンドでの 被検部位のスコア化が一般に行われるが，スコアは離 対象皮膚の輝度値をそれぞれSr, Sg, Sbとし，予め計 散量であるうえ観察者の主観が入るため，同じ被検部 測しておいた標準白色セラミック板（村上色彩，東京） 位に対し異なったスコアを与えたり，スコアを算術演 の輝度値をそれぞれWr, Wg, Wbとすれば, RGBそ 算(加減乗除)する際に理論的に妥当か否か苦慮する れぞれのバンドでの対象皮膚の反射率（リフレクタン ことが少なくなかった．一方，近年のセンサ技術とコ ス) Rr, Rg, Rbは ンピュータ技術の飛躍的な発展