高齢者の見守り.PDFVIP

ＲＥＰＯＲＴ 高齢者の見守り ―見守り関連事業に関する全国の自治体と生活者への調査― 下開 千春 前 研究開発室副主任研究員 目次 １．研究の背景と目的···························································５ ２．全国の自治体への見守り関連事業に関する調査·································６ ３．生活者への見守り関連事業に関する調査·······································11 ４．自治体による見守り関連事業の課題···········································14 要旨 ① 高齢者の単身、夫婦のみなどの「高齢者のみ世帯」が増えている。そうした世帯は、地域の 人間関係の希薄化などから、地域の目が行き届きにくい現状にある。本稿では、高齢者のみ 世帯の安全・安心を目的とした見守りについて、全国の自治体による事業の実態と課題を明 らかにすることを目的とした。調査方法は、全国の自治体を対象としたアンケートと生活者 を対象としたアンケートである。 ② 自治体が実施している見守り関連事業は、「緊急通報システム」「配食サービス」「コミュニ ティ活動や学習活動、サロンなど」が中心となっている。しかし、多くの自治体が実施して いる緊急通報システムの普及率は3.2％と低く、９年前から0.7ポイント低下している。 ③ 見守り関連事業の課題として、地域の人間関係の希薄化、民生委員や地域住民の高齢化に伴 う見守り活動への協力者の減少に加え、費用負担の増大、将来的な財源不足がある。財源や 人的資源の不足を考慮すると、地域における見守りを充実させていくことは難しく、対策が 必要となっている。従来の見守り関連事業を補完するためにも、まずは高齢者のみ世帯の基 本的な情報を確保する情報登録制度が求められるが、回答のあった自治体のうち、現在同制 度を実施している自治体は約４割にとどまる。 ④ 情報登録制度の開始にあたっては、多くの自治体が住民の理解や協力が得られにくいことを 課題に感じている。一方、生活者の多くが見守りの取り組みを必要と感じているだけでなく、 自治体による情報管理に賛同している。情報を収集する目的や管理・利用方法の説明を行い、 高齢者や家族の理解を得ることで、同制度を普及させていくことが必要といえる。 キーワード：高齢者のみ世帯、見守り、緊急通報システム ＬifeＤesign ＲＥＰＯＲＴ 4 Spring 2011.4 ＲＥＰＯＲＴ １．研究の背景と目的 （１）研究の背景 当研究所では、高齢者のみの世帯の増加を背景に、全国の自治体における「緊急通 報システム」＊１の実態について2001年に調査し、その課題を示した（下開 2002）。 調査から約10年を経たいま、孤独死の増加がニュースになるなど、地域で孤立する高 齢者への支援が社会的課題となっている。その背景には、単身や夫婦のみなど、「高 齢者のみ世帯」の増加がある。09年には、65歳以上の者のいる世帯のうち、単独世帯 （23.0％）と夫婦のみ世帯（29.8％）をあわせた高齢者のみの世帯は過半数を占めて いる（図表１）。当研究所が発行した『ライフデザイン