リスクへの理解不足が マネジメントの欠如を生む.PDF

リスクとは 1 リスクへの理解不足が マネジメントの欠如を生む IT業界で、リスク・マネジメントを正しく理解している人は少ない。そもそも「リスク」の認識 を間違えているため、リスク・マネジメントができていない。一方でリスク・マネジメントがで きていたプロジェクトは、「経験」に頼ってきた面が否めない。本書の目的は、そうしたリスク・ マネジメントの知識を体系化し、提供することにある。 　システム開発プロジェクトの現場で か」を明らかにした上で「リスクとは何 「リスクを挙げなさい」と指示をして、き か」を説明しよう。 ちんと列挙されることはまれである。ほ 知識の体系化で経験依存から脱却 とんどの人は、単に、その時点での不安 を挙げてくる。「不安」＝「リスク」との 　長年、企業の基幹システムの開発に携 認識だ。リスクを正しく認識できてい わってきた筆者には、そうしたプロジェ ないから、実際にリスクが発生しても何 クトの情報がよく入ってくる。最近、多 の対策も採れずに時間だけが過ぎてしま くの企業が基幹システムの再開発に取り う。最終的にコストの超過や要員不足、 組んでいるようだ。しかし残念ながら、 最悪の場合はカットオーバーの延期に陥 うまく進んでいる事例は少ない。 るプロジェクトが頻発している。 　プロジェクトごとに個別の理由はある 　適切なリスク・マネジメントを実施す ものの、共通して言えることがある。「身 るためには、まずは「リスク」そのものを の丈を超えるプロジェクトであるがため 正しく認識しなければならない。ここで に、プロジェクトの推進が困難に陥って は、「なぜ今、リスク・マネジメントなの いる」という点である。「身の丈を超える」  1 リスクとは リスクへの理解不足が、マネジメントの欠如を生む とは、「組織が持つシステム開発能力を 識には、押さえるべきポイントや見るべ 大きく上回る」という意味だ。 き法則がある。それを体系化し理解すれ 　再開発ということは、従来の基幹シス ば、経験だけに頼っていた以前よりも“失 テムの運用や保守をずっとやってきたは 敗プロジェクト”を減らすことができる。 ずである。ならば、「身の丈を超える」こ 特に、経験豊富なプロジェクト・マネジャ とはないように思えるかもしれない。し が開発の現場から去っている、いわゆる かし、巨大システムを保守する能力と、 2007年問題が表面化している今こそ、経 再開発する能力は違う。その違いを認識 験からの脱却が求められている。 せずに現行勢力で新システムの開発に突 　これは、ユーザー企業、ITベンダーの 入しているプロジェクトが多いように見 両方に共通した問題だと、筆者は認識し 受けら