麻痹性贝毒-j-poison.PDFVIP

公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 【麻痺性貝毒】Ver.1.00 公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 麻痺性貝毒 １．概要 麻痺性貝毒（Paralytic Shellfish Poison：PSP）は、赤潮をつくる渦鞭毛藻プ ランクトン（Alexandrium（旧 Protogonyaulax）catenella、A. tamarensis、 Pyrodinium behamense var. compressa、A. cohorticula、Gymnodinium caten- atum など）や藍藻類（Aphanizomenon flos-aquae）が産生する毒で、そのプラン クトンを摂食した貝類が毒化し、食物連鎖によってヒトに中毒を起こす。 日本ではそれらのプランクトンの増殖期にあたる初夏にホタテガイ、ムラサキイ ガイなどの二枚貝が毒化して問題となる。最近、PSP を産生する細菌も発見されて いる。 PSP には、サキシトキシン(saxitoxin；STX)、ネオサキシトキシン (neosaxitoxin、neoSTX）、ゴニオトキシン群（gonyautoxin、GTX1～GTX6）、 Protogonyautoxin（PX1～PX4）など十数成分がある。これらは著しく強力な神経毒 で、フグ中毒に酷似した中毒症状を示すが、貝類による個体差、地域差、季節差な どが大きい。 熱帯などに生息するオウギガニ科の毒ガニも PSP を高濃度に保有するものが多く、 死者を伴う中毒も発生している(1)-(6)。 ２．毒性 (1)-(5) PSP：ヒト経口最小致死量 3,000MU(3)(4) 小児経口最小致死量 140MU(1) （1MU は体重 18～20g の ddY 系雄マウスを腹腔内投与後、15 分間で殺す 毒量） サキシトキシン：ヒト経口最小致死量 0.5mg 強に相当(1)(3)(4) マウス経口 LD50 263mcg/kg(10) マウス腹腔内 LD50 10mcg/kg(2) ネオサキシトキシン：ラット経口 LD50 212mcg/kg(1) マウス経口 LD50 420mcg/kg(1) 有毒部位：イガイは主に中腸腺、オオノガイは夏は中腸腺、秋、冬は鰓が最高 アカザラガイは中腸腺に最も多く、生殖腺にもかなり蓄積される ホタテガイは主に中腸腺(2) ３．症状 (1)(2)(4)(6) 軽症では唇、舌、顔面、四肢末端のしびれ感、悪心、めまいなど 中等症ではしびれ感が麻痺に変わり、言語障害や随意運動の困難が現れる 重症例では呼吸麻痺が進行し、12 時間以内に死亡することがある。多くは 24 時間以内に快方に向い、48 時間で回復するが、数時間～数日間症状が 続くこともある 循環器系：頻脈、心電図（T 波）の変化、血圧低下（テトロドトキシン よりは軽度で、一過性） 呼吸器系：呼吸困難、呼吸筋麻痺による死亡 神経系 ：食後数分～30 分で唇、舌、喉のしびれ感や灼けるような感じ、 これが首、腕、四肢末端、顔面に広がり、麻痺に変わる。嚥下 1/3 copyright © 2009 公益財団法人 日本中毒情報センター All Rights Reserved.