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1.はじめに-土木学会

1.はじめに 土木分野では、近代土木遺産の評価、保存の動きが 1990 年代から始まった。土木学会 は 1993 年から 95 年に土木構造物としては、国内初の「近代化土木遺産全国調査」を実施 した。さらに1996 年から 98 年に実施された「重要度の高い近代土木構造物の技術的、意 匠的、系譜的評価」をもとに、「日本の近代土木遺産-現存する重要な土木構造物 2000 選-」 を 2001 年発刊し、以後改訂してきた。しかし、これらの評価された近代土木構造物も老 朽化もあって、撤去されるものも多く、今後の経年によりさらにその数は増加するものと 思われる。構造物の撤去は同時に関係資料の散逸、破棄にもつながり、現物だけではなく 近代土木技術の重要な史料が失われることも懸念される。今後土木構造物のストックの増 加に伴って、歴史的土木構造物の補修、補強などの需要が高まることが予測されるが、現 物の保存とともに、図面を中心とする関連資料についても保存・整備を進めることが極め て重要である。 歴史的土木構造物の保全に関し、鋼橋については、土木学会の委員会(歴史的鋼橋小委 員会)において 2003 年度より開始し、2006 年 11 月に「歴史的鋼橋の補修・補強マニュ アル」が土木学会より発刊された。また、2006 年 7 月より、鋼構造、コンクリート、地 盤、石造など全分野の土木構造物を対象として土木遺産の保全技術に関する活動が開始さ れた( 「土木遺産保全技術連合小委員会」)。 土木図面は、近代土木技術の関連資料の中でもその史料性からとりわけ重要な位置を占 める。しかし、現存する歴史的土木構造物でも、図面が残されている例は必ずしも多くは ない。建築分野では、近代建築の保存・活用とともに、史料としての図面に関する研究や アーカイブ整備の面からの建築関連資料の調査が進められ、近代建築物の図面収集保管に ついても積極的に進められている。 図面は他の図書と異なり、公開を意図したものではなくその存在については、実態がよ く把握されていないのが現状である。これらの関連資料は時間の経過とともに失われる可 能性が高く早急に着手する必要がある。土木分野では、図面を史料対象として扱い積極的 に評価する面では遅れているが、図面を含む関連資料に関する調査・研究は、歴史的土木 構造物の保全と一体不離の課題であり、かつとりわけ緊急性の高いテーマである。 欧米ではアーカイブ整備の一環としての土木図面の保存、閲覧が進んでいる。国内にお いてもとくに近年、デジタル技術の発展にともなって、絵画、絵図、地図、写真などの画 像を史料として解読する研究が広がりを見せている。 本調査・研究では、歴史的近代土木構造物として事例が最も多い鋼橋を対象として設計 図面を対象とした。土木分野において、図面や設計計算書を史料の対象として行った調査 としては、始めてのものであり、歴史的近代土木構造物関連資料に関する基礎的な調査・ 研究に位置づけられる。今後、本調査をきっかけに、土木分野のアーカイブ調査がさらに 拡大することを期待する。 なお、本研究は、土木学会図書館委員会と鋼橋技術研究会の関係部会で、実施したもの で、平成 18、19 年度の文科省研究助成を受けて実施した。 1 2.研究の背景 歴史的土木構造物に関する資料として、その構造物の計画、設計の段階で作成され、施 工に使用された図面は、土木史研究における一次史料として重要である。しかし、現存す るほとんどの歴史的鋼橋で、図面が残されている例はまれであり、土木史料としての図面 の活用は限られている。これは鋼橋以外の分野の土木図面でも、概ね同じ状況にある。 土木図面が史料として収集、整備されてこなかったことは、一般の図書、文献などの資 料に対して、寸法、形態が異なることによる物理的な制約や、契約図書であることによる 非公開性など文書の性格の違いもあるが、基本的なこととして、図面そのものに対する史 料価値の評価が、これまで必ずしも十分にされてこなかったことがあると考えられる。こ のことは図面の史料性に着目した既往の調査・研究が限られていることにも表れている。 2002 年に土木研究所において、20 世紀前半の橋梁設計技術者、増田淳(1883-1947)の図 面 1,300 枚および、設計計算書等 10,000 ページが発見されたことは、図面の史料として の分析、史料価値に関する調査、研究へのひとつのきっかけを与え

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