东座芸能保存会（白川町）.PDF

23 農山村 東座芸能保存会（白川町） 文化 後世に伝えるという使命感が活動を支えている 取組の背景 と言える。 白川町内の旧黒川村には、東黒川に「東座」、 中黒川に「春日座」、西黒川に「共進座」と３つ 取組の内容 もの芝居小屋があり、地（素人）歌舞伎が非常 に盛んに行われていた。 保存会では、東座での公演（行事）、管理、 東座は、明治 22 年、舞台のみが建設され、 運営をはじめ、歌舞伎の指導を行っている。 観客は野外で見ていたが、明治 33 年に客席も建 ほとんどがボランティアであり、東座と歌舞 設され現在の姿となった。 伎を愛する熱意で支えられている。 それ以来、住民による地歌舞伎や劇団の来訪 ※行事（ふれあい公演） など、地元住民の娯楽の殿堂として機能してい 年 1 回、4 月の最終日曜日に開催してい たが、昭和 30 年代に入り、映画やテレビの放映 る。また、秋の黒川中学校の文化祭も、こ により、東座の使用は減少した。同時に、他の こ 3 年前から東座で行われ、1 年生は黒川 芝居小屋も閉鎖に追い込まれ、建物の老朽化も の箱岩太鼓、2 年生は歌舞伎、3 年生は三 あり、徐々に取り壊され、加茂郡で現存する芝 味線を発表会としてやられ、父兄は元より 居小屋は東座のみ（県内では 7 棟）となった。 地域住民に大変喜ばれ、非常に好評を博し 東座も建物の老朽化が進み、昭和 40 年代に ている。 は使用禁止となり、取り壊しなどの危機があっ ふれあい公演は、毎年 2 月から稽古をはじめ、 たが、住民の財産として結論が出ず、朽ちるま 5 月の本番を迎える。そのための演技指導、舞 まに放置されていた。 台・小道具づくりをはじめ、広報、資金集め、 昭和 60 年になり、地域の伝統とアイデンテ 当日の手配など多くのボランティアの協力を得 ィティを見直す雰囲気が高まり、東座の保存運 て公演を成功させる。 動が起こった。保存会の設立や住民の粘り強い 舞台や小道具は、絵画を趣味とする人たちが 活動が実を結び、平成 2 年から東座の修復工事 ボランティアで書き割りを作成するなど、多く が始まり、平成 3 年 4 月、中村勘九郎を招き、 の人の協力が不可欠となっている。 修復記念公演が行われるなど、折からの地歌舞 東座の管理運営として、運営資金の調達も重 伎ブームにも乗り、住民の熱意が地域の伝統を 要な仕事である。運営費の補助