佐贺医学史研究会报第33号2012310.PDF

佐賀医学史研究会報 第３３号 2012/ ３/10 ４月例会案内の案内と報告募集です。 ４月１５日（日） １５：３０～場所：メートプラザ佐賀」２Ｆ視聴覚室 （佐賀市兵庫町藤木１００６番地１：電話３３－０００３） 研究報告を募集します。 ぜひ、大勢の皆さんの研究会ご参加をお待ちしています。 会員便り 前山会長から、小澤健志さんの講演会参加について 去る2 月１８日（土）はKKR ホテル博多での西日本日独協会講演会と懇親会に参加してきました。 講演は小澤健志さんの「１７世紀のドイツを観た長崎・平戸出身の日本人」です。 15 時40 分佐賀娍本丸歴史観発の天神行き西鉄バスに乗りましたが、途中から 長崎自動車道は雪が舞い前方視界不良。福岡都市高速も17 時２０分に閉鎖されました。 予定より4０分遅れで17 時50 分頃天神バスセンターに着きました。 地下鉄薬院大通り駅を出ますと吹雪で着ていたコートは真っ白になりました。 父親がVOC 社員のドイツ人、母親が平戸生まれの日本人の Peter Hartzing （1637~1680) のロマン溢れる数奇な人生についての講演でした。 1639 年の鎖国令のため1641 年、父親、母親、弟の家族４人で帰欧。 オランダのライデン大学やドイツのハノーバー大学で勉学。 宮廷顧問官や銀鉱山責任者となり財をなし、彼が遺したHartzing 奨学金は、 現在もメアースのギムナジウムの学生に役立っているとの事でした。 - 1 - 佐賀医学史話 鍋島勝茂の淋病と元茂出産 江戸時代初期の我が国第一の名医は、曲直瀬道三、玄朔であった。肥前出身の曲直瀬 家門人が全国で最も多く２８人もいたことを以前紹介した。しかし、なぜ、肥前門人が最も多 いのかの究明は今後の課題であった。今回、その解明の一端になる資料をみつけたので紹 介する。 『医学天正記』（慶長１２年・１６０７成、寛永４年・１６２７刊）という診療記録がある。曲直瀬 玄朔の２８歳からの３０年間にわたる３４９症例の診療記録である（ただし、異本では６２５例など もある）。 『医学天正記』淋の部に、次の記載があった。 淋 三十七 一 五ノ二 鍋島信濃守（勝茂）年三十余 少年ヨリ淋病ヲ患フ、 発ラ去フ、時ラ不ス、須ク甚タ発シテ渋ヲ閉ツ、通シテ後ニ痛ミ甚タ 張囊ノ下ヲ引ク、大便結ス、脈弦實ナリ、 清源湯 八正散ニテ 効ラ不ス 四物ニ 翹・通・梔（くちなし）（生也）各中 倍・虎各小ヲ加テ効アリ 関元ニ灸ス 五 十 壮 膀胱ノ俞ヲ各五十壮 （『近世漢方医学書集成６ 曲直瀬玄朔』・名著出版、157～8ページ） 関元はへそ下三寸の灸のツボ。膀胱俞は膀胱炎などの場合の灸のツボ。 鍋島信濃守は、戦国武将で佐賀藩祖ともいうべき鍋島勝茂（１５８０～１６５７）である。勝茂が 少年の頃より淋病に苦しんでいたというのも驚きだが、三十余歳の頃に、玄朔に治療を受けたと あるので、この診察は、慶長１５年（１６１０）以後のことだろう。 当時の淋病といわれるものが、現在でいうものと同じであったか、異なるものも総称したかは 現時点ではわからない。ただ、種々の薬を調合され、効果があり、灸により健康になったようなの で、現在の淋病とは異なるように思う。 この治療のあと、勝茂３４歳の慶長１８年（１６１３）に家康の養女である高源院との間に長男忠 直（松平肥前守）が生まれ、勝茂３６歳の元和元年（１６１５）１１月１２日に、直澄（蓮池藩鍋島甲 斐守）が生まれている。勝茂４３歳の元和８年（１６２２）１月２１日には、直朝（鹿島・鍋島和泉守） が生まれている。やはり健康になったのだろう。 さらに、もう一つ、佐賀藩の歴史に深い関係のある診察記録がある。 妊娠の部には 一鍋島信濃守 内 年二十余 姙産 月傷寒、寒熱汗無ク頭痛ニ嘔吐ス、脈浮数ナリ、 解肌湯傳 芎蘇散 芎 蘇 句 朮 門 皈 葛 等分 甘 葱 姜 十一日 ○衂出 又破水ノ如クナル者多ク下ル 芷ヲ加フ 梔 十一日 ○安産、産後身熱頭痛ニ 清栄湯 小柴胡ニ四物地黄生用ヲ合ス - 2 - 莎便 芷ヲ加フ