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２  ４ 回帰分析【σ の推定、 、 に関するｔ変量】 ここまで、回帰分析について学んできた読者は、本書の前半で学んだ統計的推定や検定 が全く登場しないことに疑念を感じている方も多いのではないでしょうか。回帰分析でも 当然のことながら統計的推定、検定は重要な役割を果たしています。しかしそのためには、 初心者にとって最も理解が困難な概念を理解しなければなりません。この山を乗り越えさ えすれば回帰分析の全貌をつかむことができます。本章ではこの山の攻略にとりかかるこ とにしましょう。 下の図は鹿児島県にある「林田交通」の収益率と日経平均収益率とをグラフにしたもの です。一見して、林田交通の収益率は日経平均収益率と右上がりの関係にあり、回帰直線 をあてはめれば、大きい決定係数が得られそうです。いったい「林田交通」とはどのよう な会社なのでしょうか・・・。 林田交通の収益率 30 20 10 0 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 林田交通の収益率（偽データ）= α＋β×日経収益率＋誤差項 -10 -20 -30 -40 実は、この「林田交通」の収益率は偽物なのです！ 日経平均収益率は本物のデータを使っていますが、林田交通の収益率は真っ赤な偽物なの です。ところで、読者は上記データが偽物のデータであることがすぐにわかりましたか？ ほとんどの読者は偽物であることに気づかなかったのではないでしょうか。本章の議論は、 「読者は林田交通の収益率のデータが偽物であることに気づかなかった」ということを出 発点にします。 それでは、次に種明かしをしましょう。つまり「林田交通の収益率」のデータをどのよ うにねつ造したのかをお教えするわけです。 ・林田交通の収益率（ ：偽データ）の作成方法 y i 1 y 日経平均収益率(x )  誤差項( ) i 1, ,59 i i i =0.1 1.5 日経平均収益率(x )  誤差項() i i i は平均０、分散 100 の正規分布に従う確率変数であり、実際にこの確率変数を 59 個実 現させてデータを作成したのです。ここで、日経平均収益率は本物のデータで同じく 59 個 あります。1 個の日経平均収益率が与えられたら、0.1+1.5 ×日経平均収益率を計算し、平 均 0、分散 100 の正規確率変数をエクセルで実現させ、この実現値と 0.1+1.5 ×日経平均収 益率とを足しあわせて 1 個の偽のデータを作るわけです。日経平均収益率は 59 個あるわけ ですから、59 個の偽のデータができあがることはお分かりですね？ さて、林田交通の収益率のデータは偽データであることは判明しました。偽ではあるけ れども、この偽データを使ってこれまで学習してきた回帰分析を適用してみましょう。ま ず回帰方程式、決定係数は次の