肠 管 愈 着 症 に 关 す る研 究 大 谷 满.pdf

40 腸管 癒 着症 に関 す る研 究 第1第 腸管癒着症に関する文献的考察 岡山大学温泉研究所 列科 (指導 砂田輝武教授) 大 谷 満 第 1章 緒 言 簡単な腹膜の小切開及び切除,掻雁,摩擦等 腹腔内手術に伴う術后腸管癒着の問題は, によっては癒着は発生せず,腹膜の損傷部位 われわれにとって極めて重大な問題である. は再び内皮細胞に被れて完全に治癒すると述 古くからその発生機序,防止法等について数 べている.柴田は腹膜の機械的損傷が軽度, 多の研究業績が発表されて来たが,依然とし 又は小範囲の場合は損傷部は速かに修復され て未解決な点を多く残している.最近医学の て癒着は殆んど起らないが,損傷腹膜面を縫 目ざましい進歩発展に伴い,ほとんど総ての 合により接触せしめた場合は癒着を起し易 腹腔内臓器が手術の対称となり,手術操作の く,両腹膜面を損傷した場合は,一面のみの 複雑化,抗生物質局所使用等によって腹膜を 損傷の場合に比して,はるかに癒着発生率が 直接,間接に損傷或いは刺戟する機会が多く 高いと述べている.又Vogel,Heinz,Weg- なったためか,術后腸管癒着症例が増加しつ ner,Spiegelらは腹膜の機械的損傷に化学的 つあることは周知の事実である.私はこのよ 刺戟が加わった時初めて癒着の原因となり, うな癒着の発生機序,並びに防止策の実験的 軍に機械的損傷のみの場合は,他の腸膜面と 解明に先立って,数多先人の業績,並びに文 長時間接触しなければ癒着は起らないと述べ 献を比較検討し,2,3の考察を加てみT=い. ている. 第 2章 腸管癒着の発生偉件 (2) 化学的刺戟 古くから文献に記載された,腸管癒着発生 化学的刺戟が癒着の原因となることは,疏 の原因的諸条件として,(1)機械的刺戟,(2) 床的或いは実験的に証明されている.その主 化学的刺戟,(3)温熱的刺戟,(4)細菌感染, なものに,沃安テンキ (Heinz,上野,倖々, (5)異物,(6)血液,(7)空気及び乾燥,等が挙 春山),昇衰水 (Graser,MBller,Vogel) げられる. 沃度ホル ム (Martin,Vogel,Mtiller, (1) 機械的刺戟 Wegller),石炭酸 (Graser,Vogel).ルゴ 腹膜の機械的損傷,即ち腸膜の切除,切 ール氏液 (Heinz,上野,Vogel)等があり, 創,接帽,及びメス文はガーゼの摩擦による その他多数の薬剤が癒着起因物質として知ら 内皮細胞の剥離等が癒着の原因になることは れている.Schmidtは機械的損傷に化学的 S負nger,KIotz,柴田,春山等,多くの人に 損傷が合併した時,腸の局所的麻痔と嬬動停 よって認められている.Graser,Rissman等 止を釆たし,腹腔内臓の位置変換を制限し, は腹膜の一面のみの損傷で癒着は発生すると 癒着を発生し易くすると述べている. 述べ,Stockum,Vogel,Dembowski等は, 春山は多数の