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16 環境病態研二報告　62，1991 ◎原　著 サーモグラフィを用いた冷え性の病態生理学的検討 気温の変化と冷え性患者の皮膚表面温度分布の関係について 高取　明正，　奥田　博之，　関場　香1），谷崎　勝朗2） 岡山大学医学部附属病院三朝分院産婦人科 1）岡山大学医学部産科婦人科学教室 2）岡山大学医学部附属病院三朝分院内科 要旨：季節毎の婦人の冷え性患者における全身の皮膚表面温度分布について，サーモグラフィ を用いて検討した。その結果以下のことが判明した。1）冷え性は外気温が1カ月の最高気温 が20℃，最低気温がle℃，平均気温で15℃以下になると発症しやすくなる。2）外気温が前記 の条件において，中間温環境下でサーモグラフィ上，躯幹部の最高温度と四肢部の最低温度の 差が8。C以上ある症例では99％の確率で冷えを訴えることが明かとなった。 索引用語：婦人の冷え性，サーモグラフィ，気温の変化 はじめに 対象・方法 　我々はサーモグラフィを用いた冷え性の臨床的 　1990年1月より12月までの間に当科外来を訪れ 検討を行ってきたユ）が，アンケート調査に於て冬 た患者のうち，冷えを訴える患者（以下冷え（＋） 期に冷えを訴える患者が多く（表1），また，恒 患者と記す）58名，冷えを訴えない患者（以下冷 え（一）患者と記す）21名合計77名を対象に延べ 温室内（室温26土1℃湿度55士5％の中間温環境 下）で20分間以上馴化させた後サーモグラフィを 83回サーモグラフィを施行した。食後1時間以上 用いて測定しても，冬期と夏期では同一個体に激 経過してから室温25～27℃，湿度50～60％に設定 てもかなりの差異があることに気が付いた。 した恒温室内で所定のガウンに着替えた患者に20 　そこで季節による気温の変化が冷え性発症の重 分間以上馴化させた後，日本電気高直サーモトレー 要な背景因子として存在することが考えられたた サ6T66を用いて，顔・胸部・腹部・背部・腰部・ め，季節毎の冷え性患者の表面温度分布について 大腿伸側・大腿屈側・下腿伸側・下腿屈側・足背・ 検討した。 足底・手掌・手背の各部の皮膚表面温度を測定し た。そして12～2月，3～5月，6～8，月，9～11 表1　冷えの重症度と冷えを感じる季節の関係 月の各季節毎に，冷え（＋）患者・冷え（一）患者 　　　　　　　　　　　　　　　　　　（　n　＝89） の2群に分けて各部の表面温度の最高温度と最低温 重　症　度　　　　春 夏 秋 冬 一年中 冷えてたいへん困る 1（例） 0 1 3 6 に検討した。また各二二に個体の幅幹部の最高温 冷えがよく気になる 7 3 8 20 6 度と末梢の最低温度の較差と季節の変化の関係に ついて検討した。 冷えが少し気になる 1 0 3 28 2 　尚，有意差検定はt検定で行った。 冷え症患者の皮膚表面温度と気温の変化の関係 17 方が冷え（一）群に比べて，寒くなるほど四肢末