山形県立博物馆研究报告.pdf

ISSN 0910-9463 山形県立博物館研究報告 第 25号 BULLETIN OF THE YAMAGATA PREFECTURAL MUSEUM NO.25 山 形 県 立 博 物 館 YAMAGATA PREFECTURAL MUSEUM Kajo-Machi, Yamagata City, Japan August, 2006 目　次 注口土器の修復と彩色の分析について　・・・・・・・・・・・・　１ 　安部 実（学芸専門員）　石原道知（武蔵野文化財修復研究所） 　　１．はじめに 　　２．小山崎遺跡 　　３．注口土器が出土したＢ区 　　４．注口土器の修復 　　５．赤黒彩色の顔料分析 御真影勅語謄本「奉安」の実相 －山形県の事例－　・・・・・・　13 　青木章二（学芸員） 　 　　１．はじめに 　　２．「奉置」から「奉安」へ 　　３．山形県における「奉安」体制 　　４．荒砥尋常高等小学校における「奉安」 　　５．「奉安」の対象となった御真影勅語謄本 　　６．おわりに 注口土器の修復と彩色の分析について 安部 実（学芸専門員）　　 　　　　 石原道知（武蔵野文化財修復研究所） １．はじめに ２．小山崎遺跡 　1998年、山形県遊佐町にある小山崎遺跡 　小山崎遺跡は山形県の北、遊佐町吹浦（ふ のB地区から注目すべき土器群が出土した。 くら）字七曲にある。牛渡川（うしわたりがわ）の 縄紋後期から晩期にかけての壷や土瓶（注口 右岸にある丘陵や、その周辺に広がる湧き水 土器）である。器表面に赤や黒の彩色が施さ が豊富な低地に位置している。海岸まで直線 れた精製品である。 で約1500メートルある。遺跡の範囲は東西 　なかでも、ひときわ目を引く土器片があ 300メートル、南北150メートル以上に及ぶ る。漆による彩色を残し、いまこの場で赤黒 と推測され、面積は約５万平方メートルとな の漆で塗りわけたかのごとく美しいものであ る。北側は鳥海山に連なる山裾が弓状に迫っ る。皮膜表面の状態は、光沢や刷毛の跡も ている。 残っており、とても数千年の間地中に埋もれ 　隣接する箕輪（みのわ）鮭人工孵化場の北に ていたとは思えない。土器片を接合面に沿っ は、鳥海山の伏流水（湧水）によりできた「丸 て並べてみると、赤彩色と黒彩色の二色に塗 池」があり、昔から厚く信仰されてきた。直 り分けられた注口土器とわかった。注口の取 径20メートル、水深は3.5メートルほどあ り付けられた胴部から底部付近、多段に重な る。池および周辺は遊佐町の天然記念物に指 る口縁部が残っており、一個体としての姿を 定され、原生林となっている。古来より「丸 なんとか推定することができる。この美しく 池様」と信仰の対象とされ、現在は大物忌神 希少な形姿の土器を、なんとか修復し保全し 社の社領となって