吸光光度法-日本分析化学会.PDFVIP

“はかる”ための基礎知識 吸 光 光 度 法 釜 谷 美 則 る呈色反応の種類について述べ，さらに，個々の試験法 1 は じ めに から呈色条件における注意点などについて解説する。 吸光光度計は高価な分析機器がある中で，比較的安価 2 吸光光度法でよく用いられる用語 な装置であり，そのメンテナンス及び取り扱いが容易 で，さらに故障が少ないなどの利点がある。また，ある 吸光光度法で用いられる用語の定義は，書籍によって 特定の波長のみを利用する場合は，分光の必要がなく， 幾分異なるところも見られる。そこで，この講座では吸 光学フィルターや発光ダイオードを光源としたコンパク 光光度分析通則 （ ）を参考にして幾つ JIS K 0115 2004 ト，且つ安価な装置で定量でき，環境教育でのフィール か解説する。 ド測定などに用いられている。吸光光度計は分析機器の １ 透過率 ：ある波長の光が溶液層を通過したと T 中で最も普及しており，分析機関にはほとんど備えられ き，入射光の強度と透過光の強度の比で表したものであ ている。 る。ここで，透過前の強度を1 とした場合の透過後の 物質の紫外・可視スペクトルは色々な情報を提供す 強度を透過率T と呼ぶ。この透過率に100 をかけた値 る。例えば，純粋な物質のスペクトルと比較することで が透過率パーセント％T である。 おおよその同定や不純物の存在を知ることができる。ま ２ 吸光度 ：試料を透過した光の強度（ ）と，透 E T た，そのスペクトルから分子の電子状態や立体構造も推 過前の光の強度（T0 ）との比を常用対数で表した数値 論できる。一方，特定の波長を使用すると，その吸光度 であり，吸光度 ＝－ ( / ）で表すことができる。 E log T T0 は濃度に比例することから，試料中目的成分の濃度を知 ３  ランバート・ベールの法則：吸光度 は溶液の厚 E ることができる。 さ （セルの光路長）と溶液の濃度に比例する。すな l c 吸光光度法では，紫外部から可視部までにわたる波長 わち，吸光度が光路長に比例することをLambert の法 範囲を取り扱っている。しかし，紫外部は，目的成分以 則と言い，濃度に比例することをBeer の法則という。 きょうざつ 外の夾雑物質の吸収による妨害が多い