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消費者行動： その歴史 と展望 Consumer Behavior Study : The History and the Prospects 　 内　 田　　　成 UCHIDA, Minoru 遡りうるが、その研究は個々の消費者の行動 １．はじめに および意識の研究から始まった、といえよう。 　近代のマーケティングは商品をいかに市場 次いで消費者行動研究のもう一つの側面とし で販売するかという外部適応の視点にもとづ て、消費者の相互作用を挙げることができる。 くものである、といえようが、この考え方は これは消費者行動への社会学的・社会心理学 物不足の社会からもの余りの社会への変化を 的視角からのアプローチといえようが、社会 背景に、マーケティングの基本的パラダイム 階層研究やマスコミ研究などをあげることが がプロダクトアウトからマーケットインへ転 できる。この視角からの研究は個々の消費者 換したことでも説明できる。これはコンセプ よりも、集団としての消費者や消費者相互間 トの変遷で説明できる。需要が供給を上回る の分析を中心課題としている。たとえば、流 時代においては、メーカーは単に商品の生産 行の伝播、消費行動への他人の影響や体面な に専念していればよかった。しかし、その後、 どに関する消費者行動の分析が重要性を持っ （２） 供給が需要を上回るような時代、すなわち「ゆ てくる 。 たかな社会」の到来とともに、売れるものを 　特に、ゆたかな社会、大衆消費社会の到来 つくることが生産の基本となった。この点に とともに消費者行動に大きな変化が生じてき ついて、1960年にE.J.マッカーシーは、その ていることは改めて指摘するまでもあるまい。 著『ベーシックマーケティング』で４Pに基 わが国においても第二次世界大戦後直後の物 づくマーケティングを明確化し、企業活動の 不足の時代からもの余りの時代になるにつれ 中心に顧客を位置づけた。そのことは顧客（消 て、消費者行動の変化が生じてきており、そ 費者）・市場への適応活動こそが企業のマー れを解明するにはさまざま角度からのアプ ケティングの最重要課題となり、したがって ローチが必要となろう。また、1980年代以降、 消費者行動分析が、その出発点となることを ポストモダンの消費者行動分析も重要な分野 （１） （３） 意味している 。 として注目を集めている 。 　消費者行動分析の歴史は20世紀の初頭まで 　そこで、本稿では、これまでの消費者行動 キーワード：消費者、消費、文化、制度 Key words consumer, consumption, culture, inst