赤潮-东京海洋大学.PDFVIP

これから「赤潮」の話をしよう 目次 はじめに 第一章 赤潮ってなに? １． 赤潮 ２． Harmul Algal Bloom 第二章 「赤潮って悪いんでしょ。」 ～高校生の多くはこう考えている?～ 1． ほとんどの高校生は赤潮を見たことがない!? 2. 高校生の抱く赤潮の印象 3. 赤潮は生き物を殺す厄介者? 第三章 赤潮の実態に迫ろう! 1. 養殖業を悩ます赤潮の猛威 2. 赤潮対策 3. どんなプランクトンが赤潮生物なの? 4. 毎年、どのくらいの赤潮が起きているのか 5． 富栄養から貧栄養 第四章 赤潮の知られざる側面 1. 海洋生態系を支える 2. きれいな海?豊かな海? 第五章 自然現象としての赤潮 第六章 赤潮と向き合う はじめに 下は何の写真だと思いますか? (c) OPO/Artefactory フォトサイエンス生物図録から転載 「赤い!」、「どこかで見たことがある。」、「知っている!」と思った方もいるかもしれません。 正解は、「赤潮」です。 「聞いたことはあるぞ!」という方は多いのではないでしょうか?赤潮とはプランクトンの大 量発生により海水が着色する現象です。しかし、赤潮は単に海色を変化させるだけではあり ません。養殖が行われている海域で赤潮が発生すると、プランクトンが鰓に詰まったり、活性 酸素という物質を出すことで鰓を傷つけ、養殖魚等の窒息死を招くことがあります。また、 発生した海域の酸素濃度を低下させ、生き物が住めない状態にしてしまう恐れさえありま す。このような漁業被害を伴う赤潮は、1970年代頃から水産上大きな問題として取り上げら れるようになりました。1972年には播磨灘で赤潮による漁業被害が7１億円にも上り、その後 も2009年に約33億円、2010年に約54億円の被害を伴う赤潮が八代海で頻発しました。現在 でも、瀬戸内海だけで毎年100件近くの赤潮が報告されています。 赤潮に関してたくさんの研究が行われてきましたが、現在でも多くの被害が出ています。 赤潮の問題を解決に近づけるためには、その海域の管理のあり方を考える必要があります。 どのように海域を管理していくかは、専門家だけが考えればよいわけではありません。専門 家と一般の方々が赤潮の認識や情報を共有し、一人ひとりが赤潮との向き合い方や考えを 持ち、あるべき海の姿を考えていく必要があります。本書は、赤潮のことをあまり知らない方 々に、赤潮について広く学んでいただくお手伝いをするために作成しました。本書を作成す るにあたって、本書を読んでくださる方が、赤潮に対してどのようなイメージや知識をお持 ちであるか、調べることにしました。高校生295人を対象に赤潮に関するアンケートを行いま した。アンケートは2部構成にして、前半では、高校生がどのくらい海に対して関心があるかを 調べ、後半において、赤潮に対するイメージや知識を調べました。このアンケート結果を基 に、高校生のイメージする赤潮と実際の違いを紹介・説明していきます。 第一章 赤潮ってなに? 1. 赤潮 1996年、赤潮に関する研究協議会で、赤潮は「海水中で微小な生物（主に植物プランクト ン）が異常に増殖して，そのために海水の色が変わる現象」と定義されました。赤潮のほと んどは植物プランクトンの大量発生によるものです。それでは、何が海を着色するほど植物 プランクトンを増加させているのでしょうか。主な要因の一つとして、栄養塩が挙げられま す。植物プランクトンは光合成により有機物を生成する際に、無機物である窒素やリンなど の栄養塩を必要とします。一般的に、大都市に接する内湾などの栄養塩の供給が多い海域 で赤潮は多く見られます。 2． Harmful Algal Blooｍ 微細藻類の中には、海水が着色するほど増殖しなくても人間や海洋生物に悪影響を与え るものがあります。そのような有害有毒藻類種が増加する現象を着色の有無に関係なく“H -armful Algal Bloom=HAB”（有害有毒藻類ブルーム）といいます。Algal Bloom（藻類ブルー ム）は、湖沼、河川、海洋で藻類が爆発的に増殖する現象のことです。 第二章 「赤潮って悪いんでしょ。」 ～高校生の多くはこう考えている?～ １． ほとんどの高校生が赤潮を見たことがない ！? 読者の皆さんは赤潮を見たことがあるでしょうか? アンケートから非常に興味深い結果が 得られました。それは、回答者295人の内 263人(8割)の高校生が赤潮を見たこと が