岩石力学と穿孔技术-J-Stage.PDFVIP

UDC 622.243.4: 622.026.3 岩 石 力 学 と 穿 孔 技 術* 総 説 正 会 員 下 村 弥 太 郎** 岩・石の硬さの内容が異なつてくる。 1.ま え が き a)引 掻き硬度 鉱物の硬度は 「鉱物表面の分子5 鉱山,と くに岩石の堅硬な金属鉱山においては,さ く の凝集力である」とする考え方に基くもので,モ ース 岩作業の占める役割は依然として大きく,か つコストの の硬度計がその尺度として1818年 以来広く使われてい 面からも大きなウエイトを持つ重要な作業の一つに数え る。その後,リ ッジウエイ,ウ ッデル,ロ シワール,レ られている。さく岩作業には穿孔と爆破の二つの作業が イモンド等の人々によつて拡張あるいは細分されて来 含まれ,鉱 山の実作業においてはこの二つは密接不可分 た。これらの引掻き硬度は鉱物自体の硬度を表わしてい の関係にあるが,技 術的内容の点では両者は全く異質の るので,各 種鉱物の集合体である岩石の硬度を表わすに ものといつてよい。したがつて岩石に対するさく岩作業 は不適当である。また,穿 乳抵抗に対して重要な要素と の難易を示す言葉として一般に使われている 「さく岩抵 なる鉱物粒子の形状,大 きさ,配 列状態等の差異を表わ 抗」は,穿 孔抵抗と爆破抵抗の二つに分けて考えること し得ないので,こ の引掻き硬度を穿孔抵抗の尺度とする が必要である。穿孔抵抗の大きい岩石は一般に爆破抵抗 ことは不適当と考えられている。 も大であるが,岩 石の中には穿孔が容易であつても爆破 b)摩 耗硬度 一方,鉱 物の硬度は 「平らな表面 の困難なものがあり,ま たこの逆の場合もある。なお, の摩耗に対する抵抗」とも考えられているが,岩 石の硬 岩石の穿孔抵抗の大小,す なわち穿孔の難易あるいは穿 度に対しても同様の考え方が適用されている。この摩耗 孔性は穿孔方法によつても異なる。 硬度測定法には,回 転円盤上で研摩剤によつて岩石試験 穿孔方式としては,さ く岩機等による打撃穿孔,オ ー 片を摩耗させ,摩 耗重量あるいは容積等を測定する試験 ガ・ドリルやダイヤモンド・ボーリング等による回転穿 法(ド リー法),あ るいは平らな岩石表面に軟鉄棒を押 孔,こ の両者を組合わせた回転打撃穿孔等の機械力によ 付けて回転させ,軟 鉄棒の摩耗量を測定する試験法(シ り岩石を破砕する方式が依然として広く使われている。 ーバース法)等がある。そして,岩石の摩耗硬度はこれら しかし,高 周波の振動を利用する超音波穿孔,高 圧噴流 の試験法で得られた摩耗度の逆数をもつて対比される｡ 水による水力穿孔,あ るいは火炎ジェット穿孔等の新し 岩石の摩耗硬度は,穿 孔時におけるビットの摩耗に関 い穿孔技術も着実に進歩しつつある。 連する性質として,打 撃穿孔の際はもちろんのこと,殊 しかし,硬 岩に対する爆破孔の穿孔には,打 撃穿孔が に回転穿孔や回転打撃穿孔の場合には特に重要な因子と 今なお世界の大勢を占めているのが現状である。したが なつている。例えば,神 岡鉱山の岩石について行なつた つて打撃穿孔に関して主に話を進めることとする。 実験結果では,ダ イヤモンド・ボーリングの試錐速度と 岩石の摩耗長とはほぼ比例的関係にあることが認められ 2.岩 石の物理性と穿孔性との関連