釜石鉱山新山鉱床産鱼眼石について-J-Stage.PDFVIP

鉱物学雑誌 第1巻 第6号414～4211954年5月 釜石鉱 山新 山鉱床産魚眼石について On the Apophyllite from the Shin-yama. Kamaishi Mine 湊 秀 雄 (Hideo Minato) 和 田 成 人 (Narundo Wada) 鶴 島 鎮 彦 (Shizuhiko Tsurushima) 1.序 言 　岩手県上閉伊郡 甲子村釜石鉱 山に於て現在 主要な稼行対象である新山鉱床 はその近傍に点在する他鉱床 と同様な模式的な接触交代鉱床である。即 ち北 上山地に分布す る古生代石灰岩 と花 崗閃緑岩,閃 緑班岩等の接触部に発逹す る鉱床であつて,友鉄ザクロ石 を主体 とす るザクロ石類,友 鉄輝 石及 び緑 簾石等 よ り成 るスカル ン鉱物を伴い,磁鉄鉱 より成 る鉄鉱及び 黄 銅 鉱 を主 とする銅鉱 を産出する。また近時鉱床 の一部に電 気石,斧 石及び ペー ジ石 (paigeite,(Fe,Mg)2FeBO5)等の含硼素鉱物の産出 も明 らかにされてい る。 　これ等の鉱床及びその周辺の岩石 中には更に多 くの熱水性 の細脈の発達が 見 られ,石英,方解石,沸石類,緑泥石等の産出も認め られ る。 またそれ等の 脈の一部は小空 洞を形成 し,その内壁に水晶,方解石等の 自形結晶の存在す ることがあるが,今回報告す る魚眼石(apophyllite)も方解石または沸石類 鉱物 を伴い この種の小室洞内に産出 し九 ものである。その結晶は第1図写真 に示す よ うで,無色透明の径1cmに 及ぶ良晶 として産出す る。以下 この結 晶の産状及び鉱物学的研究の結果 を報告する。 2.産出地点及び産状 　この魚眼石産出地点は新 山鉱床 の鉄鉱床の北端であつて400米北坑の運搬 坑道 よりN160米坑道への屈 曲部にあた り(第2図)1952年春 に採集 され *1953年10月仙台 に於 ける全 国鉱業大会学術講演会 に於 て湊秀雄 に より講演 され た。 **東京大学教養学部 。 ***日鉄鉱業株式会社釜石鉱業所 。 湊秀雄　和田成人　鶴島鎭彦415 　第1図 釜石鉱山新山鉱床産魚眼石結晶 された。 　産出地点附近の地質関係 は第2図 に示す よ うであつて,鉄 鉱体 と閃緑〓岩 の闇にはさまつて灰鉄ザクロ石 を主とす るスカル ン鉱物帶 と友鉄ザクロ石, 緑簾石を主 とす るスカル ン鉱物 中に鉄鉱 石が鉱染状に存在す る帶 とがある。 なお この部分の鉱石は釜石鉱 山においては下鉱 として取扱われ,染 状の部分 は貧鉱 として取扱われている。 　魚眼石の産出位置は第2図 ×印の点である。即ち貪鉱内に存在 した小空隙 内に産出 し,その室隙は魚眼石及び方解石の晶洞を形威する。 なお この他 に 赤色を帶びた輝沸石脈の微細空 隙内に小結晶 の産出 した一例があるが,そ の 他 にはその後 も見出されていない。 3.一 般 性 質 　結晶は径最大1Cmに 及び無色透明で,晶洞壁面 との間に は一部に方解石 が存在する。透明な良晶をしらべ ると二種鉱物が包有 されてい る。 その包有 物は陽起石(actinolite)の針状結晶を筒状に包んで雲母様鉱物の徴細片が被 覆 してい るものでる 。陽起石 と雲母様鉱物 とは密着 してい るが雲母様鉱物 と魚眼石 との問には小間隙があ り,魚眼石結晶を破碎す ろ場合管状の室隙を 残 して包有物が分離す る。なお この陽起石は径0.1～0.05mm,長さ数 ミリで あ り,柱帶に垂直に近い断面は菱形である。鏡下では帶緑青色,淡褐色,帶黄 色の多色性が認 め られ る。雲母