统合的思考-Deloitte.PDFVIP

CSR・環境 WICIシンポジウム2013 競争力向上へ繋げる「統合的思考」の役割： 「伝える」から「わかる」統合報告へ 統合報告アドバイザリー室 1．はじめに 3．Session1：「統合的思考に関す 「競争力向上へつなげる『統合的思考の役割』：『伝 る資本提供者との対話」 える』から『わかる』統合報告へ」のテーマのもと IIRCの技術部会メンバーである日本公認会計士 に、World Intellectual Capital/Assets 協会の森洋一氏司会のもと、投資家サイドの投資判 ＊1 Initiative （WICI） によるシンポジウムが平成25 断の現状と統合報告の有用性に関するディスカッシ 年11月22日に開催され、統合報告の実践を中心に ョンが行われた。 国際統合報告評議会（IIRC）の関係者や日本の規制 まず投資判断の現状として、株式会社バリューレ 当局、実務関係者を交えて議論された。以下はその イザー社長の川原稔氏は、非財務情報は投資判断に 要旨である。なお、WICIによるシンポジウムは今 有用な情報であるにもかかわらず、そのような非財 年で6回目を迎え、2012年からIIRCの後援を受け 務情報が今の報告書には記載されていない点を指摘 ている。 し、投資家が求めている情報はアウトプットだけで なく、企業の成長に結びついたアウトプットを作り 出す能力や、具体的なインプットについての情報で 2．基調講演 あることを述べた。ブラックロック・ジャパン株式 最初に、経済産業省審議官である西山圭太氏によ 会社のコーポレートガバナンス・チーム運用部門ヴ る基調講演が行われた。 ァイスプレジデントである江良明嗣氏は、投資家は 西山氏は、競争力向上（アベノミクス「第三の矢」） 時間的制約により各レポートを読み込む時間がない の点から、企業の持続的な成長における課題への取 こと、また投資のグローバル化により日本企業を熟 り組みとして、社外取締役の導入の推進、また日本 知していない海外投資家が短期的な視点で投資する 版スチュワードシップ・コードの策定、収益面や経 こともあり、市場へのアプローチ手法が短期化して 営面で評価の高い上場企業の銘柄からなるインデッ いることを挙げた。 クスを作るといったソフト・ローを活用したコーポ 本セッションで問題とされたのは、経営者は「投 レートガバナンスの強化について述べた。 資家からは非財務情報に関する質問がないため非財 社外取締役を経営戦略を進めるための人材ととら 務情報は必要ない」と考える一方で、投資家は「企 え、「comply and explain」と、その導入だけで 業の成長に繋がる資本の使途に関するロジックを端