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卒論レジュメ2006年6月14日7期　高久　玲音 PAGE 3技術革新の研究～平成不況期を中心に～Ⅰ本日の流れ１研究テーマの紹介２先行研究の紹介　～Hayashi and Prescott(2002)～３先行研究の紹介　～川本(2004)～４先行研究への疑問　５仮説と展望Ⅱ研究テーマと出発点　日本が90年代に戦後最悪の不況を経験したことは論を待たない。しかし問題なのは、なにゆえにそうした不況が起こったのか？という点だろう。ある論者によれば、平成不況の原因は供給サイドの生産性の低下にあり、それゆえ小泉内閣が推進しているような、官から民への「構造改革」が必要である。これらの考え方に理論的なバックボーンを与えた研究としては、Hayashi and Prescott (2002)がある。彼らは図１のようなGDP成長率とTFPの相関を確認し、経済成長がもっぱらサプライサイドの成長によるものだとしている。　一方で、需要不足に平成不況の原因を求める人もいる。ケインジアンである吉川はその代表格である。例えば、吉川(2004)では、バブル期において土地を高値で売却した富裕層の貯蓄が、その後の有効需要の低下につながったことも一因である、と主張している。　しかし、とりわけ重要な論点はTFP(Total Factor Productivity) TFPの説明は補論１を参照にされたい。の解釈である。TFPが技術進歩を表すのか、それとも規模の経済性や稼働率などの「不純物」を多く含んでいるのか、という論点は、吉川(2003)も「最大の問題点 TFPの説明は補論１を参照にされたい。 吉川(2003)ｐ23　そこでわたくしの研究テーマは「技術革新の研究」となった。研究の出発点は、Hayashi and Prescott (2002)に対する川本(2004)の反論と、その反論に対するわたくし自身の違和感である。川本(2004)はTFPから稼働率などの不純物を取り除いた「真の技術進歩」は平成不況時にも一貫して増加している、と論じている。　これらの研究を足がかりとして、わたくしは平成不況期において技術進歩という観察不可能な変数がいかなる軌跡を描いていたのか、明らかにしたい。もちろん研究内容としては、TFPになにがしかの変数を付け加えたり、あるいはTFPが表しているもの自体を解釈しなおしたりすることがメインになるだろう。図１　資料）JIPデータベース JIPデータベースは、内閣府経済社会総合研究所のウェブ?サイト( HYPERLINK http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun170/bun170.html http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun170/bun170.html)よりエクセルファイルで入手可能である。備考）TFPの値はJIPデータベースの表6-12「TFPの伸び率(基準ケース)」よりダウンロードしたものを用いた。また付加価値成長率は同データベースの表１－C「部門別中間投入合計?粗付加価値内訳?生産額（実質値）」における付加価値の値を対数化し、その差分を付加価値成長率とした。　Ⅲ　Hayashi and Prescott (2002）次に広範な論議を呼んだHayashi and Prescott (2002)を簡単に紹介する。彼らによれば平成不況にとって決定的な要因は二つある。一つは技術進歩を表すTFPの低下、もう一つは1988年の労働基準法の改正による総労働時間の減少である。　まず前者については次のような表を示している。表１　日本における一人あたりGNP成長率の要因分解　一人当たりGNP成長率TFP資本ストック労働時間就業率1960～19737.2%6.5%2.3%-0.8%-0.7%1974～19832.2%0.8%2.1%-0.4%-0.3%1983～19913.6%3.7%0.2%-0.5%0.1%1991～20000.5%0.3%1.4%-0.9%-0.4%資料）Hayashi and Prescott (2002）p214 Table1このうち注目すべきは、80年代に年率3.7%だったTFPの上昇率が、90年代には0.3% に低下したことである。彼らはTFPを純粋に技術進歩の指標になると考え、このような技術の伸びの鈍化が平成不況の原因だったと結論付ける。後者の説明には参考までに次のグラフを載せておく。図２資料）厚生労働省『毎月勤労統計調査』各年度版Ⅳ　川本（2004）　川本(2004)はHayashi and Prescott (2002）に対する「再考」を促している。具体的には、稼働率や再分配効果、規模の経済性で修正を加えた「真の技術進歩」の低下は、90年代に