電気探査によるベントナイト鉱床の探査と評価 ─宮城県土浮山鉱.pdfVIP

論　文 物理探査　第 64 巻第 5 号 ( ) - 頁 2011 309 318 BUTSURI-TANSA, 電気探査によるベントナイト鉱床の探査と評価 －宮城県土浮山鉱山を例にして－ * ** * *3 高倉伸一 ・南 大樹 ・高木哲一 ・伊藤雅和 要 旨 ベントナイトは様々な分野の産業に使用されている粘土である。地下にあるベントナイトを探すた め，現在，多くのボーリング調査が行われている。しかし，ボーリングの掘削はコストが高く，得ら れる地質情報は局所的なものであるので，ボーリング調査とは別の有効なベントナイトの探査法が求 められている。ベントナイトは高導電性を示すスメクタイトを多量に含むことから，一般に比抵抗は 非常に低い。したがって，地下の比抵抗分布を求める電気・電磁探査はベントナイト探査に適してい ると考えられる。電気・電磁探査のベントナイト探査への適用性を評価するため，宮城県にある土浮 山鉱山で比抵抗法電気探査の実験を行った。解析された比抵抗断面から，低比抵抗体が地質調査や多 くの調査井によって確認されているベントナイト鉱体とよく対応することが確認された。ベントナイ ト試料で計測した比抵抗とメチレンブルー吸着量の間に高い相関があり，メチレンブルー吸着量はベ ントナイトの特性を評価する指標として使われていることから，我々は両者の相関を利用して比抵抗 断面からメチレンブルー吸着量の分布の断面を推定した。高いメチレンブルー吸着量を示す領域は， ボーリング調査で確認されているベントナイト鉱体の位置と概ね一致した。このことは，電気・電磁 探査のような比抵抗探査がベントナイトの探査や評価に有効であることを示している。 キーワード ：ベントナイト・比抵抗・電気探査・メチレンブルー吸着量・土浮山鉱山 1. はじめに 入が増えつつある。また，用途にあった高品質のベント ナイトの需要も増えている。品質の高いベントナイトを ベントナイトは海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が 安定確保するため，ベントナイトの探査が国内外で行わ 変質することで生成される粘土鉱物の一種である。ベン れている。 トナイトの用途は広く，鋳物分野の生型用粘結剤，土木 ベントナイトの探査は，現在，地表調査とボーリング 分野の基礎工事用泥水，農薬分野の粘結剤など，産業を 調査による地質学的手法が中心となっている。開発対象 支える材料として重宝されている。また，化粧品の材料 が地表から深部へと向かうに伴い，地下に賦存するベン やペット用トイレ砂など，生活に密着した製品の原材料 トナイト層の位置や規模を把握するため，ボーリング調 にもなっている。さらに，原子力発電所などから排出さ 査の適用が増えつつある。ボーリングは確実な探査方法 れる高レベル放射性廃棄物を遮蔽する材料としても期待 であるが，それで把握される層序は基本的には掘削場所 されている。ベントナイトは国内に多く賦存する鉱物資 限りの点情報である。ベントナイト層の連続性を推定す 源であるが，需要の高まりとともに地表から採掘される るためには，複数のボーリングによる点情報を補間する ベントナイト層は少なくなってきており，海外からの輸 ことが必要になる。