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感染症 なぜ今感染症を勉強するのか？ （スライド３枚） 講義の目的 病院の外来で最も多くみる疾患は、いくつかの疾患に限定される。内科外来でよく見る疾患30種類で外来患者の80％以上をしめる。 ■脳?神経系 脳卒中、認知症、頭痛症、不眠、うつ、パーキンソン病 ■呼吸器系 呼吸器感染症、喘息、閉塞性肺疾患（COPD) ■消化器系 胃腸炎、消化性潰瘍、便秘症、肝炎、肝硬変、胆石 ■循環器 虚血性心疾患（心筋梗塞?狭心症）、不整脈、高血圧 ■腎?泌尿器 尿路感染症（膀胱炎、腎盂腎炎）、前立腺肥大症、尿路結石、慢性腎臓病（CKD) ■内分泌?血液 糖尿病、高脂血症、甲状腺機能異常、痛風、貧血 ■免疫系 慢性関節リウマチ、じんましん（食物アレルギーなど） ■がん 特に太字で下線の引いてある疾患に注目。すべて感染症である。このように感染症は、外来患者の多くを占める重要な疾患であり、今後も減ることなく発症してくると考えられる。講義の目的は、こうした感染症を理解して対処方法を学ぶことにある。 １．感染と発症（感染とは何か？） 感染とは、病原微生物が宿主の組織に侵入し、増殖し始めることを指す。感染があっても必ずしも病気が発症するとは限らない。発病した場合を顕性感染と呼び、発病しない場合を不顕性感染と呼ぶ。 ２．感染症とは何か？ 微生物が宿主の組織に侵入し、増殖し始めた結果、宿主に異常が生じて発病することを感染症とよぶ。 ３．常在菌叢とは何か？（自分を含めて人間の体にこれだけ多くの細菌がいることを 　良く理解する。） ヒトの各部位には常在している非病原性微生物があり、これらは通常の状態では病気を起すことはない。例えば皮膚にはブドウ球菌や乳酸菌などが、大腸には大腸菌や乳酸菌などが存在する。口腔内には300種類以上の常在菌が存在する。皮膚に１０１２、口腔には１０１８、消化管には１０１４の菌が常在している。 常在菌叢の意義は何か？ 常在菌叢は、皮膚や粘膜において感染防御に働いている。例えば大腸の常在菌叢が、栄養素を競合してしまったり、バクテリオシンを産生したりして外来性の病原菌の増殖を抑制している。また適当な免疫刺激となっている。大腸の常在菌叢に存在する嫌気性菌は、種々のビタミン類を合成する。 ４．感染源となる病原体（スライド）（教科書の表７?１） １）細菌：1個の細胞からなる。増殖は細胞分裂による。細胞を含まない培地で培養可。 　　グラム染色 　　　グラム陽性菌：黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、腸球菌 　　　グラム陰性菌：大腸菌、クレブシエラ、インフルエンザ菌、緑膿菌 ２）真菌：カビや酵母の仲間。増殖は細胞分裂による。細胞を含まない培地で培養可。 ３）原虫：単細胞生物。風土病の原因となる。細胞を含まない培地で培養可。 ４）クラミジア：球状の病原体。細胞を含まない培地で培養不可。 ５）リケッチア：0.3?m程度の病原体。細胞を含まない培地で培養不可。 ６）ウイルス：15nmから数百nmの病原体。細胞を含まない培地で培養不可。核酸としてDNAもしくはRNAのいずれかを持つ。 ７）寄生虫：回虫、吸虫（内部寄生虫）、のみ、しらみ（外部寄生虫） ５．病原性 病原性は以下の3要因で決まる 　　侵襲性 　　毒力：内毒素（エンドトキシン）、外毒素（エキソトキシン） 　　病原体の増殖性 下の表で大事なことは、少数の菌で感染するものもあれば、多くの菌量で始めて感染するものもあること。例えば、食中毒菌は多量の菌が要るが、夏の暑いときには放置した食べ物で菌がすぐに増殖して食中毒をおこす。腸炎ビブリオは食中毒の発症には大量の菌が必要であるが、増殖速度が非常に速いために、夏場などは食中毒になりやすい。 感染症の成立に必要な6要素（スライド） 感染経路（特に飛沫感染と空気感染の違いを良く理解する） 宿主反応 　非特異的：上皮組織、分泌物、食細胞 　特異的：液性免疫と細胞性免疫 　粘膜免疫：分泌型IgA 　胎児期?幼児期の感染防御:母体から移行した胎盤通過性IgG（生後6ヶ月まで存在する） 感染症と宿主反応のタイプ(スライド) 日和見感染：抗癌剤治療、免疫抑制剤療法、放射線療法などによって免疫応答が低下した状態やAIDSなどで免疫能が低下した状態では、弱毒性病原体でも感染症を起こす。（スライド） 実際の現場に出る際に、自分を含めて医療従事者は患者にとってバイキンマンである自覚を持つ！ 抗癌剤や放射線治療後は、骨髄抑制のために好中球が減少するので、好中球が防御反応の主体を演じる病原体（化膿菌、腸内細菌、カンジダ、アスペルギールス）の感染が生じる。 一方、免疫抑制剤投与後やAIDSなどでは細胞性免疫が防御の主体を演じる病原体（ウイルス、結核菌、クリプトコッカス、原虫など）の感