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体育授業における教師の反省的思考の変容に関する実践的研究 体育授業における教師の反省的思考の 変容に関する実践的研究 ―授業中の「出来事」への気づきに着目して― 教育学科　山口孝治 抄　録 本研究の目的は，小学校高学年担当の教員１ の「出来事」への気づきは「出来事」調査票 名を対象に，授業実践段階において運動教材に を，それぞれ用いて検討を試みた。その結果， 対する知識（技術的知識，つまずきへの対処法 被験教師の介入後の授業中の「出来事」への気 の知識）を提示・説明することにより，彼の授 づきは，介入前に比して，量的にも質的にも変 業実践への反省的思考がどのように変容したの 容したことが認められた。 かを，授業中の「出来事」への気づきの変容か ら検討することを目的とした。運動教材に対す キーワード：反省的実践，授業中の「出来事」， る知識の理解は「展開型表現様式」を，授業中 体育授業研究 Ⅰ．緒　言 に迫る授業研究を進めるには，仮説－検証スタ 従前の体育授業における授業研究の大半は， イルの授業研究，すなわち，内容的条件につな 「授業の分析的研究」である。これには，アメ がる仮説の設定－授業実践－プロダクトの発現 リカで開発された「プロセス－プロダクト研究 メカニズムの追求といった新たな授業研究のあ 法」（以下，Ｐ－Ｐ研究法と記す）が大きく関 り方を追求していく必要がある。 係している。こうしたＰ－Ｐ研究法の発展に伴 これに呼応するように，梅野（2006）は， い，授業の科学も飛躍的に進歩してきた。これ 「体育授業学」の構築を企図する立場から量的 により，学習成果を高める指導プログラムの開 研究法の不十分さを指摘するとともに，今後の 発や教授技術が数多く生産され，「いつでも， 授業研究の方向性を提示している。すなわち， どこでも，誰にでも」通用する授業実践の展開 彼は優れた実践者の授業実践を丹念に分析する が容易になってきた。しかし一方で，上記のＰ ことで，そこで得られた実践的知識を従前の授 －Ｐ研究法は，体育授業の基礎的条件（マネー 業の分析的研究の成果との比較から，それらの ジメントや学習の規律，授業の雰囲気，学習従 共通性と異質性を吟味すること，さらにはそこ 事量や運動量など）を満足することはできても， で得られた実践的知識のうち，他の教師が掴み 内容的条件（目標・内容の押さえ方，教材・教 きれる内容とそうでない内容を峻別し，優れた 具の工夫，学習過程の組織化など）を解明する 実践者にみる実践的知識の反復化・再現化の可 には至らないという指摘が認められるように 能性を追求していくことの重要性を指摘してい なった（高橋，1992）。これより，内容的条件 る。こうした授業研究を「教師を変える授業研 41 佛教大学教育学部学会紀要　第11号（2012年３月） 究」として範疇化した。 されるのかについて検討した