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超音速自然層流翼設計のための逆問題設計法の研究 超音速で空気抵抗を減らす新しい設計技術を開発 次世代超音速旅客機の開発に役立つ新しい空力設計法を確立する 一昨年就航を終えたコンコルドの後継として次世代 機体に働 く空気抵抗は圧力抵抗と摩擦抵抗に 超音速旅客機が待望されています。コンコル ドの 分かれ、従来設計ではコンコル ドに代表される 主要課題はその経済性と環境適合性にありました。 細長胴体と三角形型の薄翼の形状で圧力抵抗の 超音速機チームではこれまで小型超音速実験機 低減が図られてきました。一方、摩擦抵抗は境界 計画を通してこれらの課題に挑戦してきましたが、 層と呼ばれる物体表面近傍の薄い層状の流れの 2005年10月10日にロケット打上げによる無 構造に起因します。超音速機特有の後退翼上の 推力実験機を用いて、経済性改善を目的とした空 境界層ではその構造が複雑となるため、摩擦抵抗の 気抵抗低減技術の飛行実証を行ないました 1（、2 低減に適した構造を形状の工夫だけで実現させる ページ参照）。 ことが困難と考えられていました。そこで、当チーム 　今回開発した独自技術はCFDを用いた逆問題 ではCFD逆問題設計法を駆使して世界で初めて 設計法による超音速自然層流翼の設計です。通常、 この課題に挑戦しました。 CFD逆問題設計法による超音速自然層流翼設計 　摩擦抵抗の成因である境界層はその流れの構 　小型超音速実験機計画では、まず後退翼上の 造に応じて２種類に分かれます。定常流を例に取 境界層の構造を摩擦抵抗低減に適したものとす りますと、一つは時間的に変動せず、空間的に整 るような物体面上の圧力分布を多角的に検討し、 然と速度分布が変化する層“流状態、もう一つは 理想的な分布形を見出しました。次にその分布形 時間 ・空間的に激しく変動している乱“流状態で、 を正確に実現させるために翼形状の曲率変化を 層流から乱流への移行を遷移と呼びます。摩擦抵 CFDを用いた逆問題設計法で求めました。通常、 抗は乱流の方が大きいので境界層をできるだけ 形状を与えて流れ場 例（えば圧力分布）を解くの 広範囲にわたって層流に保つことが摩擦抵抗低 が順問題、それに対して流れ場の情報を与えてそ 減のための有効な対策となります。これを形状の れを実現する形状を求めることを逆問題と呼びます。 工夫のみで “自然に実現させる翼のことを 「自然 今回の自然層流翼設計はこの逆問題設計法の最 層流翼」と呼びます。 適な応用例です。 3 　図３はこの４次形状の風 洞試験による遷移点の後退 状況を示したもので、設計点 と非設計点の比較を通 して 自然層流翼効果を定性的 には確認することができました。