最小矩形法の方法論的可能性について.pdfVIP

経済論叢（京都大学）第 183 巻第２号，2009 年４月 45 最小矩形法の方法論的可能性について ――バイアスを含んだデータへの応用可能性―― 鍵 原 理 人 大きさ n のデータ y in に基づいて，y qq な i=1 Ⅰ 序論 る正値未知母数 q0 を推定することを考えよ 本稿では，Kagihara［2009］の結果を基とし う。例えば，y と q との間の何らかの誤差を最 て，最小矩形法の統計的側面を紹介すると共に， 小化することによって，未知母数 q を推定する その方法論上の可能性を論ずることにする。最 ことが考えられる。最小二乗法ならば二乗誤差 小 矩 形 法 は，正 値 逆 問 題 の 解 法 と し て， py ,q€2 を最小化し，最小絶対偏差法ならば絶対 Yoneda ［2006］によって提案されている。原因 誤差 y ,q を最小化する。この時，未知母数 q qRK と 結 果y Rn と の 間 の 因 果 機 構 の推定量として，それぞれ標本平均と標本中央 x pq€:RKRn （K ?n, y qx pq€）を所与として， 値が帰結されることはよく知られた事実であ 望ましい結果 y を生む為の原因 q を同定しよ る。いずれの場合も，直感的には y qq から帰 うとする逆問題において，Yoneda［2006］は， 結される py ,q€ q0 という誤差に着目したもの x pq€ とy が正値から成る場合を正値逆問題と と言えるが，y, q 共に正値であることに注意す 定義し，最小二乗法に代わる方法として最小矩 れば，y qq0 から導かれる誤差として，以下 形法を提案した。Kagihara and Yoneda［2009］ を構成することができる。 は，Yoneda［2006］で提示された統計モデルの q q 妥当性を考察し，尤度の最大化が最小矩形法を ry ,1q0 log y q0. p1€ 帰結するようにそのモデルを修正した。以上で これらの誤差を用いて，Stein［1964］，Brown 導 出 さ れ た 確 率 分 布 は，Johnson, Kotz and ［1968］，Maatta and Casella［1990］のように Balakrishnan［1994，1995］等の文献に見出せ 二乗誤差 ておらず，新奇な分布である可能性もある為， h py, q€ /r q ,12 p2€ y Kagihara［2009］においてその基本的な性質が に着目することもできようし，Brown［1968］ 分析されている。以下，最小矩形推定量の基本 のように対数二乗誤差 的な統計的性質と共に，その過程で導出される q 2 新規であり得る確率分布とその一般化を紹介す h py, q€ /rlog y