量子多体協力現象の解明と制御1．研究実施の概要.pdfVIP

21 「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」 平成１7 年度採択研究代表者 宮下 精二 東京大学大学院理学系研究科・教授 量子多体協力現象の解明と制御 §１．研究実施の概要 量子ダイナミックス、量子シミュレーション、量子応答、量子相転移など量子情報操作の基礎とな る動的量子現象に関して、研究を進めた。具体的成果としては、個別の成果にあげるように、対称 性が破れた横磁場イジングモデルでの量子スピノーダル現象、交流外場のもとでのフロケ固有値 の反発擬交差やランダウ・ゼナー現象、熱浴との相互作用を取り入れた量子マスター方程式に基 づいた複素帯磁率の表式、光格子上で実現されうる大きなスピン(S1/2)での長岡機構やそこでの 新しいタイプの磁性、光照射による協力的な状態変化、基底状態に縮退がある系の量子アニーリ ングの性質、非平衡統計力学のジャルジンスキー等式を適用した基底状態の高速探索法、開放 量子系の輸送現象における「共鳴準位模型」と「アンダーソン模型」で厳密な散乱状態解非局所更 新量子モンテカルロ法によるスピンパイエルス系での非磁性不純物まわりの有効磁気モーメントの 分布や、量子モンテカルロ法を用いたエンタングルメントエントロピーの測定法、分子磁性体、スピ ンクロスオーバー分子などにおける量子状態のスイッチング現象の制御方法を開発した。これらの 成果は多岐にわたっているが、基本的には動的な状態変化の把握、制御に関する具体的な基礎 情報を与えるもので、トンネル現象など共通の観点のもとで今後統一的な立場からまとめたい。ま た、対応する実験による実証も視野に入ってきたのでその方面の努力もしていきたい。 §２．研究実施体制 （１）「東京大学」グループ（研究機関別） ①研究分担グループ長：宮下 精二（東京大学、教授） 研究分担グループ長：羽田野 直道（東京大学、准教授） 1 研究分担グループ長：藤堂 眞治（東京大学、講師） 研究分担グループ長：西野 正理（物質・材料研究機構、主任研究員） ② 研究項目 量子相互作用による動的現象の理論的研究（宮下 G） G 巨視的に広がった格子において量子的なユニットして働く局所的な構造の探索（藤堂 G） 量子相互作用による動的現象の理論的研究（西野 G） （２）「東京工業大学」グループ（研究機関別） ① 研究分担グループ長：西森 秀稔（東京工業大学、教授） ②研究項目 縮退のある系の量子アニーリング 量子アニーリングにおける計算量評価 量子アニーリングにおける残留エネルギーの評価 §３．研究実施内容 （文中に番号がある場合は（４－１）に対応する） ＜宮下グループ＞ 量子ダイナミックスに関しては、対称性が破れた横磁場イジングモデルの基底状態の間を磁場を 掃引することで量子状態が量子ゆらぎによって、どのように変化するかを調べ、量子スピノーダル 現象を提案した 1）。そのような過程を理解するため、速い掃引の極限からの