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国土交通省 建設技術研究開発助成制度 基礎・応用研究開発課題 「地震による斜面崩壊予測とそれによる家屋・道路被害推計の統合システムの開発」 平成２１年度実績報告 個別研究課題名「浅水方程式ベースの粒子法による斜面流動解析法の開発」 研究分担者名：松島亘志（筑波大学システム情報工学研究科構造エネルギー工学専攻） 研究概要： 1. はじめに 近年頻発している豪雨や地震による斜面災害を軽減するためには、斜面崩壊の有無のみな らず、土砂流動による影響領域や、対策工への流動圧の算定が必要である。しかしながら、 各地の地盤を構成している材料の物性は不均質であり、地形や土中水分量の情報も含めれ ば、算定のための地盤入力データは全く不足しているのが現状である。ただ、そういった 状況の中でも、今できる範囲の最善の検討を行うことは必要であり、またそのような検討 を通じて、評価精度のボトルネックを同定し、今後の防災対策のための地盤調査の必要性 を主張していくことも重要であると思われる。本研究では、全国土を2.5m メッシュでカバ ーできる現状唯一のデータ源である PRISM-DSM を用いて、斜面広域流動解析を行い、そ の結果を考察したものである。 2. PRISM-DSM の概要 土砂災害評価のために必要な地形データに関しては、国土地理院が 10m メッシュの数値 地図を全国整備しており、更に航空レーザースキャナ測量によって 5m メッシュの標高デー タを順次整備している。しかしながら後者の整備地域は限定されており、全国整備までに は時間がかかると思われる。一方、JAXA が 2006 年に打ち上げた地球観測衛星「ALOS (Advance Land Observing Satellite, 日本名：だいち」に搭載されているPRISM センサは、 同じ場所の画像を３方向から取得することが可能であり、その画像データを用いて立体視 画像処理を行うことより、2.5m メッシュのDSM(Digital Surface Model) を作成することが できる。現在、産業技術研究所情報技術研究部門地球観測グリッド研究グループが、この 画像処理サービスを提供しており、本研究でもその処理結果を用いている。PRISM センサ は、雲がないときでないと良好なデータを取得できないが、運用開始から３年が過ぎ、ほ ぼ全国土を網羅するデータが得られてきている。立体視によって得られる標高データは、 元画像の様々なノイズ等により、場合によっては 10m 程度の誤差を含む場合もあると言わ れているが、2.5m メッシュで国土全域をカバーするデータ源としては、現状では唯一のも のである。 図 1 は、2008 年岩手宮城内陸地震で土石流を引き起こしたドゾウ沢周辺の地形について、 PRISM-DSM によって得られた標高データから作成した等高線図を、国土地理院 25000 分 の１の地形図と比較したものである。等高線はどちらも 10m おきに描かれている。谷部に ついては絶対値も含めて良好な一致が見られるものの、尾根部や左側の山地部には、頂上 位置など大きな差異も見られる。これは、DSM に用いた画像が冬のものであったため、山 地部が雪で覆われ、適切な立体視ができなかったことが原因として考えられる。 国土交通省 建設技術研究開発助成制度 基礎・応用研究開発課題 「地震による斜面崩壊予測とそれによる家屋・道路被害推計の統合システムの開発」 平成２１年度実績報告 産女川源頭部 ドゾウ沢源頭部 図 1 2008 年岩手宮城内陸地震ドゾウ沢周辺の地形(左：国土地理院 25000 分の１の地形図、右： PRISM-DSM 結果) 3. 土砂流動解析の概要 地盤工学の分野で用いられる斜面崩壊解析には、FEM などが用いられることが多い。し かしながら、FEM では変形が大きい場合にはメッシュのゆがみが無視できず、リメッシン グなどの処理が必要となる。更に、土石流のように