洪水時河川における浮遊ゴミ輸送量計測の試み.pdfVIP

土木学会論文集Ｂ Vol.66No.1,19-24,2010.1 洪水時河川における浮遊ゴミ輸送量計測の試み 1 2 二瓶泰雄 ・若月宣人 1 正会員 東京理科大学准教授 理工学部土木工学科（〒278-8510 千葉県野田市山崎2641） E-mail:nihei@rs.noda.tus.ac.jp 2 非会員 東京都建設局南多摩東部建設事務所工事課（〒194-002 東京都町田市中町 1-31-12） 河川を経由して輸送されるゴミは沿岸部の漂着ゴミの重要な供給源となっているが，その実態は不明な 点が多い．本研究では，千葉県・大堀川を対象として，洪水時における浮遊ゴミ輸送量の実態把握を目的 とした現地調査を実施し，植生等の自然系ゴミの質量・有機物・栄養塩輸送量を算出した．その結果，洪 水時におけるゴミ輸送量の最小値と最大値は 4，5 オーダーも異なり，その変動幅は 1 オーダー程度の流量 と比べて非常に大きい．また，同一流量では増水期のゴミ輸送量は減水期よりも 1 オーダー大きく，ゴミ 輸送量と流量のヒステリシスは一般的な汚濁負荷よりも大きい．さらに，洪水規模が大きいほどゴミ輸送 量は顕著になり，流域からの汚濁負荷を考える上ではゴミ輸送による寄与が有意であることが示された． Key Words : marine litter, pollutant load, flood, L-Q curve, vegetation 1．はじめに は全く把握されていない．そのため，海域での漂流ゴミシ ミュレーションにおいて最も重要な河川でのゴミ流入条 近年，沿岸域での大量の漂着ゴミが大きく問題視されて 件の設定は実測データが無いがゆえに曖昧のままである． 1 ） いる ．この漂着ゴミは，プラスティック製品や発泡スチ 本研究では，洪水時において河川を流下する浮遊ゴミを ロール，漁具，工業薬品用ポリ容器などの“人工系ゴミ” 採取し，洪水時の自然系ゴミ輸送量の実態を把握すること や流木や木片，植生などの“自然系ゴミ”から構成されて を試みる．ここでは，千葉県・手賀沼に流入する大堀川に いる．これらの漂着ゴミは嵩張るものが多く，その回収・ おいて，一つの洪水イベント時の浮遊ゴミ輸送量調査を実 処理に多額の費用を要するため，それらを実施する行政機 施した．採取されたゴミが自然系ゴミのみであったので， 関には大きな負担となっている．また，漂着ゴミにより， 洪水時の自然系ゴミの質量・有機物・窒素 N ・リンP 輸 漁業活動の被害や沿岸環境・生態系への影響が報告されて 送量等を算出し，ゴミ起源の汚濁負荷と河川水の汚濁負荷 1 いる ） ．これより，漂着ゴミの実態やその起源や輸送ルー 量を比較する．なお，本来，海域に流入する大河川におい トをモニタリングし，対策を施すことは喫緊の課題である． てゴミ輸送量調査を行うべきであるが，観測準備の都合や このような状況に対して，様々な研究者やNPO が我が 降雨条件の関係で，目標とする洪水時調査を行うことがで 国の海岸における漂着ゴミのモ