別紙―2木津川流域での地域と行政との橋渡しによる水質改善.pdfVIP

地域づくり・コミュニケーション部門：No.06 別紙―２ 木津川流域での地域と行政との橋渡しによる 水質改善に向けた取り組み ～木津川一斉水ウォッチング～ 山田 信人 淀川管内河川レンジャー（〒573-0056 大阪府枚方市桜町3-32 中央流域センター） 30 (COD( ) ) 木津川は， 数年前と比べほぼ汚れ 化学的酸素要求量 値で見る が倍増している．そ 10 COD して，この 年位は 値が横ばいを示している．多くの木津川支流が汚染増加によって流域 の住民から疎遠なものとなり，治水優先の対策によりコンクリート３面張りとなるなど，生物 の生息環境が悪化し，子どもたちや住民が川や流域の自然にふれあえなくなってきている． そのため，木津川とその支流の水質汚染の実態把握と改善を目的として，取組を行った．水 質問題を中心としながら，豊かな自然の再生による環境保全活動の前進を通して，子どもたち が遊び住民が憩える川づくりを目指して，地域と連携した取り組みを行った． キーワード 河川レンジャー，水質汚染，水質調査，環境保全，地域連携，行政施策 淀川本川と淀川三川の水質変化が比較できるように，元 1. はじめに データから作成したのが，図-1のグラフである． 「泉川渡瀬深み わが背子が 旅行き衣 濡れにけ （PPM） るかも」(万葉集3315) この歌にある泉川とは，現在の京都府南部を流れる木 津川のことである．万葉の昔から，「木津川は泉のよう にきれいな水」として知られており，流域の人々に豊か な水と様々な生活用品をもたらしてきた． 1960 また 年代までは，夏場になると水泳場が開設され， 多くの流域住民が訪れるなど，木津川は身近な河川とし て生活に密着した存在であった． しかしながら高度経済成長期に入り，木津川の汚れが 増加をする中で，水泳場が廃止されるなど「子ども達が 遊び，住民が憩える川」という姿が変化してきた．加え て，京都府南部は大阪市・京都市のベッドタウンとして の開発が急激に進み，木津川の多くの支流が治水対策と 図-1 淀川三川における水質の経年変化(COD値の3年平均) してコンクリート３面張りなどの状況が進んだ．そして， このことが川から住民を遠ざけると同時に，木津川の水 このCOD のグラフを見ると，30 数年前は木津川が三 質悪化にも繋がることとなった． 川中最も綺麗な水質であり，淀川を綺麗にする作用をし こうした問題意識の下，河川レンジャーとして，木津 ていたことが分かる．しかしその後，水質が徐々に悪化 14 し，30 数年前と比べ現在は汚れがほぼ倍増している． 高校化学クラブの 年間に渡る水質調査指導の経験を生 かそうと考え，木津川とその支流の水質調査を柱にした これと比べ，京都市内を流れる桂川の水質は過去 14ppm 河川レンジャー活動を計画し，実践してきた． という激しい汚染が見られたが，現在は 4ppm 弱と大幅 な減少となっている．そして 2008～10 年平均では，こ 2. 木津川の水質の経年変化 の２河川のCOD がほぼ同じ値になった。水