身体発育計測マニュアル-e-archive.criced.tsukuba.docVIP

身体発育計測マニュアル １．身体計測の意味 　生体計測は発育状況の調査に用いられ、児童生徒の身体の健全な発育、健康状態、疾病の有無や栄養状態の把握などで利用されている。また、人間工学的にも利用され、机、いすの適合状況の判定などが代表例である。 ２．個人の発育の特徴 　人の顔が一人ひとり異なるように、身体の大きさや発育のペース、発育のタイミングは子どもそれぞれで異なっている。しかし、そのような個人差がある者の、一般的な発育のパターンは決まっており、それから著しく異なることは少ない。著しく異なる場合には、何らかの疾病が隠れていたり、栄養状態が不良であったり、家庭での生活に問題があったりする場合がある。これらの問題を明らかにするために、体の大きさを定期的に計測し、発育の一般的なパターンに照らして、順調に発育が行われているかを確認することは非常に重要である。 　しかし、残念ながら、ミャンマーでは現在、その一般的なパターンが明らかとなっていない。そこで、一般的なパターンを明らかにするためにも発育調査が必要である。 ３．都市と農村の差、時代差、地域差、民族差 　個人の発育はそれぞれの生活環境が影響を及ぼす様に、集団の発育現象はその地域や時代、民族などの違いを受けて発生してきている。 日本では第2次世界大戦後の高度経済成長期に、身長が急激に大きくなった。たとえば、1960年には成人男子の身長は163cmであったが、1980年にはおよそ170cmとなり、現在も少しずつ伸びている。体の大きさだけではなく、発育急増期は早くなる傾向であった。我々の研究により、タイ王国でも、体がおおきくなる現象は1980年から2000年の間に起こっており、都市部ではこの20年間に約6cm大きくなっている。 　都市と農村を比べると、都市部のほうが身体の大きい傾向があることがある。これは生活環境が原因となっていると考えられる。日本では都市と農村の生活の違いはほとんど見られないが、タイ国では農村は未だに非常に貧しい状態が続いている。 　民族によって身体の大きさが異なっている。これは、遺伝や生活習慣が原因となっている。民族によって体の大きさが異なる場合には、ビルマ族で作成した身体発育の標準値は他の民族には必ずしも適切とはいえない。たとえば、仮にモン族の体の大きさがビルマ族に比べて少し小さい場合、ビルマ族を基準にしてモン族の体の大きさを評価した時は、順調に体が大きくなっていても、発育不良と判断されてしまう可能性もある。 以上のような不都合を解決するために、ミャンマー全土で、都市部と農村部、また民族ごとに測定を実施することが重要である。 ４．ワークショップ参加者の役割 今回のワークショップでは、参加者の先生方に身体の計測のスペシャリストになって頂き、学校で指導的役割をお願いしたい。また、将来、本プロジェクトがより拡大し、また児童生徒の発育評価が全国に展開した場合、先生方のタウンシップにとどまらずより広い地域での指導的な役割を果たす可能性もある。 　５．身体計測の実施者について 身体計測を行うときには、大きさを測る人と記録をとる人の2名のチームで実施する。測定項目は、骨の長さ、筋肉などの付き方、脂肪の付き方の３つに分類できる。従って、3チーム合計6名が標準的な測定者である。しかし、学校の規模を考慮して、学校の規模が大きいとチームをたくさん準備してもよいし、学校の規模が小さいともう少し少ない人数でもよい。 ６．測定者と記録者の役割、測定の流れ 　測定者は、計測項目の詳細に従い計測を行い、記録者に口頭で測定値を伝達する。 　記録者は、測定者の補助を行いながら、測定者が伝えた測定値を再び口頭で復唱し記録用紙に記録する。 　測定者は、記録者が復唱した測定値を確認し、誤りがあれば訂正する。 ７．身体計測の対象者 　対象者は、5歳から18歳の児童生徒である。学校で対象者を選抜してはならない。児童生徒を全員計測しない場合には、クラス単位で測定する。それぞれの児童生徒は、タウンシップ、学校名、学年、性別、年齢、民族、生年月日を明記した記録用紙を持ち、対象となる測定項目を全て計測する。また、生育環境調査がある場合にはその指示に従って回答し、身体計測の記録用紙と生育環境の調査用紙を一緒にして提出する。 ８．測定の時期 測定は2006年（毎年）11月に実施する。身体計測は午前中に実施する。なお、資料の回収は2006年12月に予定している。 ９．計測項目と方法 身長 身長用メジャーの設置 　床面がコンクリートなどで舗装もしくは木の床であり、水平であり、壁面は2ｍ以上の垂直の壁に身長用メジャーを貼る。メジャーを垂直にかつ、床面に０の位置をあわせて身長用メジャーを貼る（図２）。また、頭にあてる木材、もし