腹腔镜手术.doc

骨盤臓器脱…腹腔鏡使いメッシュ手術　 　子宮や膀胱などが、膣から出てきてしまう「骨盤臓器脱」。中高年の女性に多く、命には関わらないが、日常生活に深刻な影響を与える。今年４月から腹腔鏡を使ったメッシュ手術が一部保険適用になり、治療の選択肢が広がった。 女性の骨盤の中には、子宮や膀胱、直腸などの臓器が収まっていて、靱帯や筋膜などの組織が縦横に支えている。「骨盤臓器脱」は、この組織が緩むことで臓器が膣の壁を圧迫して体の外に出てくる病気。以前は、出てくる臓器によって子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤などと呼ばれていた。 　 おなかの中が下がった感じがする、ピンポン球のような物が膣からはみ出た、椅子に座ると股間に何か挟まっている感じがする、尿や便が出にくい、尿漏れがある、などの症状が出る。出産を経験した人に多く、米国では５０歳以上の約４割に骨盤臓器脱があるとの報告もある。いったん臓器が出てしまうと自然に治ることはない。 　腹腔鏡を使った手術は、おなかに数か所、小さな穴を開けて膣や子宮をメッシュ（網状の合成樹脂）で前後に挟む形で縫いつけ、反対側のメッシュの端を骨盤の背骨の付け根に固定してつり上げる。欧米で広く行われ、日本でも２０１２年から先進医療として日本医大病院（東京?千駄木）などで行われていた。 今回の保険適用は膀胱瘤が対象だが、骨盤臓器脱の患者は複数の臓器が下がっていることも多く、適応範囲は広いと期待される。ただ、症状や医師の判断で異なり、保険適用になるかどうか事前に医療機関に相談する必要がある。 　メッシュを使った手術としては、膣を切って、そこからメッシュを骨盤の中に入れる手術が国内でも０５年から実施されてきた。 　ところが、この手術が広く行われてきた米国では、１１年に米食品医薬品局が、手術後に膣の傷痕からメッシュが露出してくることがあるなどとし、「熟練した医師がリスクを考慮して行うように」とする警告を発した。その影響で、米国では膣からメッシュを入れる手術が減り、腹腔鏡を使った手術が増えているという。 　日本医大産婦人科講師の市川雅男さんは「腹腔鏡を使った手術は、再発や膣からのメッシュの露出が少ない優れた治療法だが、メッシュを生涯、体に入れておくことになるので、医師とよく相談してから受けてほしい」と話す。 　骨盤臓器脱の治療はメッシュを使わない手術もあり、性交渉を一切行わない場合は、膣を縫って塞ぐ方法もある。手術をしたくなければ、膣の中に直径５～８センチ程度のペッサリーという輪を入れる。ただ、定期的な交換が必要で、出血したり、おりものが増えたりする人もいる。骨盤臓器脱の程度が軽ければ、尿道や肛門、膣を締めたり緩めたりして筋肉を鍛える「骨盤底筋体操」を試みるのも良い。 　患者の希望や年齢、病状によって選択肢が異なる。メッシュ手術や腹腔鏡手術の経験が豊富な婦人科や泌尿器科のある病院で相談するのが望ましい。 　亀田京橋クリニック（東京都中央区）でウロギネ（女性泌尿器科）外来を行う野村昌良さんは「独りで悩んでいる女性も少なくない。治療で劇的に生活が改善することもあるので、一度、専門の医師を受診してみてほしい」と話す。（館林牧子） （讀賣新聞　2014年7月　掲載）