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日本でのCT １号機－EMI scanner と当時の神経放射線画像診断 1) 2) 3) 小野由子 江島光弘 吉田滋俊 1) 東京女子医科大学 画像診断学?核医学講座 ? 中央放射線部2) 前 脳神経センター神経放射線科1,2,3) 初めてのCT 画像 1975 年 8 月26 日の夕方に、東京女子医科大学脳神経センター神経放射線科に日本 で初めて設置されたEMI スキャナー（頭部 X 線 CT）によって、脳の画像診断には 天地がひっくり返ったような出来事が始まった。 その日、翌日に悪性黒色腫の脳転移の手術を控えた患者さんに、やっと設置?調整 が終わったばかりの頭部CT 検査が施行された。 痙攣発作で発症し、脳血管撮影で血 管に富む2 個の転移巣がみつかっていた。 １回のスキャンで2 スライス画像を得るのに4 分半、13mm 厚スライスという画像 であったが、単純CT で テント上下に多数の腫瘍と周囲の浮腫が見てとれ、造影剤投 与により大小の多数の腫瘍が濃染してはっきりみられた。（図1- a,b） 当時のセンター長の喜多村孝一教授をはじめ脳外科医にとって、それまでの脳の画 像診断は血管撮影で脳の形と動静脈の状況を知り、気脳撮影でくも膜下腔と脳室の形 をみるものであった。その時、脳を輪切りにした画像が多数の腫瘍とともに目前にあ った。脳腫瘍手術の経験が豊富で、EMI の情報も得ており、既に米国の学会で何枚か のEMI 画像を経験した医師たちであったが、実際に多数の転移性腫瘍と周囲の浮腫を 手に取るように見るのは初めてで、その衝撃は相当なものだった。正に別世界の脳の 診断法の始まりの瞬間であり、あっという間に検査室は脳外科医だけでなく院内の何 十人もの教授?医師が集まり、検査室には人が溢れていた。 この貴重な１例の画像は１コマずつポラロイドフィルムに撮影され、その画像が翌 日には日本中に広まっていた。電子メールなど世の中に存在せず、ファックスさえな い時代で、複数の人間（おそらくMR さん）がその画像のコピーを持って、日本中へ 飛んだのである。 1 (図1-a,b ：造影CT 大小の多数の造影効果を呈する腫瘍と周囲の浮腫、腫瘍内壊死が見られる。) (図1-c,d ：剖検脳CT と同レベルのスライス。 小さな腫瘍も当時のCT でとらえられていたことが証明された。) CT 出現までの脳の画像診断 CT 導入の直前の1975 年 第２回医英国医療機器展 （東京）で開催された技術セミナ ー 「EMI スキャンナー」でのテキストに東京女子医科大学脳神経センター所長、脳神 経外科学喜多村孝一教授による「神経放射線の歴史を中心に脳神経外科の立場から見 1) たEMI スキャンナー 」、神経放射線科の小林直紀講師（当時）による「神経放射線科 の立場から見たEMI スキャンナー2) 」が掲載されている。CT 出現前の脳外科手術に利 用された神経放射線領域の画像診断と CT （EMI スキャンナー）への大きな期待が述 べられている。喜多村はそれまでの血管撮影、気脳撮影を主とした画像診断、脳手術、 術後管理などの多大な経験から、CT から確実に得られるもの、可能性のあるものを的 2 確に指摘した。小林は当時出ていたCT に関する論文内容を把握し、CT の原理も臨床 の中で必要な情報もすべて理解し、それまでの画像診断の経験と合わせてCT 診断の詳 細なイメージが出来上がっていたと思える。当時は生体の脳の中を見る手段がなかっ たにもかかわらず、脳外科医、神経放射線科医として、血管撮影と気脳撮影から判断 する診断能の高さと先見の明の確実さに敬服する。 当時の脳疾患に対する画像診断法は、単純X 線撮影、血管撮影、気脳撮影、脊髄撮 影と核医学の脳および脳