Title脳性麻痺の言語障害の様相IssueDateDOI.pdfVIP

Title脳性麻痺の言語障害の様相 Author(s)鈴木, 真知子; 室橋, 春光 Citation北海道大学大学院教育学研究院紀要, 111: 65-80 Issue Date2010-12-25 DOI 10.14943/.111.65 Doc URL /2115/44651 Right Type bulletin (article) Additional Information File 04Suzuki.pdf Information Instructions for use 北海道大学大学院教育学研究院 紀要　第 111 号　2010 年 12 月 65 脳性麻痺の言語障害の様相 * ** 鈴　木　真知子 ?室　橋　春　光 New Aspect of Language and Speech Disorder with Cerebral Parlays Machiko SUZUKI, Harumitu MUROHASI 脳研究は，この四半世紀で急速に進展した。脳性麻痺の言語臨床においても，臨床像による 病型分類が脳障害部位を客観的な指標で同定できるようになり，その臨床像と障害部位との 関連性を機能面でも推察できるようになった。この経緯を，①1970年代以前，②1970年から 1990年まで，③2000年まで，④2010年の現在までに区切って，①医学的段階，②臨床像，③ 臨床の現場の三側面からその変化の過程について整理を試みた。特に，1990年代に早産未熟 児に関して，高い確率でPVL（脳室周囲白質軟化症）やHIE（低酸素脳症）が出現し，言語 や学習，社会的行動の課題の相関を示唆する先行研究が相次いだ。2000年以降には,fMRIや NIRUSなど画像分析が普及し始め，脳性麻痺などの脳損傷児の脳内における言語や運動活動 がリアルタイムに分析する研究が始まってきた。 【キーワード】脳性麻痺の言語治療の歴史，脳科学の進歩，脳画像解析，ワーキングメモリ と実行機能，ワ－キングメモリ容量 １．序 1970 年代までは，脳性麻痺の言語障害は障害の坩堝といわれた。言語臨床に携わる ST そ のものが少なく，脳性麻痺の複雑な臨床像の理解，評価そのものは未確立であり，指導法 の確立はまだまだ困難であった。1980 年代に入って，CT?scan が導入され，ついで MRI や PET などの脳画像検査の開発が相次いだ。また，画像解像度の向上や，リアルタイムに脳血 流の変化がビジュアルで捉えられるようになるにつれて，様々な脳障害を画像と臨床像を対 応させながら分析できるようになり，脳研究が急速に進展してきた。 上記の経過の中で，脳性麻痺の臨床においても，これまでの臨床像による病型分類は，脳 障害部位を客観的な指標で同定できるようになり，その臨床像と障害部位との関連性を機能 面でも推察できるようになった。この知見を集積し，これまで説明されてきた脳性麻痺にお ける臨床像について現段階における到達点についてのまとめを試みた。 研究方法は，脳科学の発展に着目しつつ，これまでの脳性麻痺の言語治療の流れを 1970 年代以前，CT?Scan が普及した 1990 年まで，MRI，PET が導入され脳研究が加速し始めた 2000 年まで，fMRI などの普及によって脳活動（脳血流）がリアルタイムに把握できるよう になりはじめ，様々な脳活動に関する仮説検証が一気に進みだしている現在までに分けてそ の時代の特徴を整理した。 * 北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程（特殊教育?臨床心理学研究グループ） ** 北海道大学教育学研究院 66 ２．1970年代までの脳性麻痺の言語治療 これ以前の脳性麻痺に関する知見は少ない。1960 年代の後半に入って治療が開始され始 めた足跡を此処では述べる。 ２－１　医学的側面