FFAG加速器の開発.pdfVIP

The 14th Symposium on Accelerator Science and Technology, Tsukuba, Japan, November 2003 FFAG 加速器の開発 高エネルギー加速器研究機構 森 義治 していることにより、運転の容易さはサイクロトロン並み 1 はじめに である。最後に、取り出しエネルギーやパルスの時間構造 のフレキシビリティーはシンクロトロンと同様に持つこ 加速器の利用は、原子核?素粒子物理学の分野にとどま とが出来る。さらに、シンクロトロンと同様に電子、陽子 らず、物質?エネルギー科学、医学?生命科学さらには環 等の粒子種類によらずに加速できることも、サイクロトロ 境科学等様々な方面で展開されようとしているが、ここに ンにはない大きな特徴の一つである。 提案するFFAG 加速器は、そのいずれにおいても有用な汎 用加速器である。ここでは、汎用性の用件として、効率、 2 FFAG 加速器の原理と POP-FFAG 加 サイズ、コスト、運転の容易さ、フレキシビリティを考慮 した。FFAG とは、Fixed Field Alternating Gradient の頭文字 速器による原理実証 で、その名が示すように一定磁場でかつ強集束な光学系を 代表的な円形加速器にはサイクロトロンとシンクロト 有する。原理は大河千弘により 1953 年に世界で最初に提 ロンがある。サイクロトロンでは等時性を保つ必要から、 案されたが、技術的困難により今日まで実用的な加速器と ビーム進行方向の集束安定性が原理的に存在しない。すな して成立していなかった。しかしながら我々のグループは、 わち大強度ビームにおける空間電荷力によるビーム発散 科学研究費補助金による開発研究によりこれらの困難を に対応することが難しくなる。また、ビームエネルギーが 克服し、平成 12 年6 月に、世界で最初の陽子ビーム加速 高くなるにつれ、ビーム軌道のターンセパレーションが小 のFFAG 加速器を原理実証した。さらに、平成１３年度よ さくなり、ビームの取り出しが難しくなる。一方、シンク り科研費「学術創成研究」により 150MeV のエネルギーま ロトロンはビームの集束力を強くでき、大強度ビームの空 で陽子を加速するFFAG 加速器の実用機実証モデルの開発 間電荷発散力を抑えるうえでビーム運動学的には原理的 を行っている。そこでは150MeV 陽子FFAG 加速器に必要 に優れている。ただし、通常のシンクロトロンは同一軌道 な機器の開発を進め、加速器システムとして完成させる。 上で粒子を加速する。そのため磁場の強さを時間的にエネ それとともに、この 150MeV FFAG